若年層に対する
プログラミング教育の普及推進報告2017

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大学カリキュラムと連携したメンターの効率的かつ持続的育成モデル

株式会社アーテック

H28年度当初予算にて実証実施

1.モデルの概要

1.1 モデル名称

大学カリキュラムと連携したメンターの持続的かつ継続的育成モデル

1.2 モデルの全体概要

九州工業大学工学学生が小学校および高等学校におけるプログラミング授業のメンター(指導者)となる取り組み。小学校、高校ともにアーテックの「アーテックロボ」を用いて、車タイプのロボットのプログラミングを行う。5回の授業で完結するカリキュラムで、5回目の授業ではロボットコンテストをして競技することを目標に取り組む。本実証事業では、継続的なメンター人材の育成を目的に、メンター活動を単位認定することで大学生側の参加の動機付けとモチベーション向上を図った。

2.モデルの内容

2.1 メンターの募集・研修について

2.1.1 メンター募集期間

平成28年7月20日~8月31日

2.1.2 メンター募集方法

該当する学生が受講する授業「PBL科目」において告知

2.1.3 メンター募集対象(メンター種別)

九州工業大学学部生(総合システム工学科1~4年)
九州工業大学大学院生

2.1.4 メンター種別の選択理由

同学部生が1年次に総合システム工学科必須科目「入門PBL」において、本実証事業と同一の教材を使用したプログラミングを履修済みだったため。
また、同科目において、コミュニケーションスキルに関する実習を重ねており、メンターとしての基礎力を備えていると判断したため。

2.1.5 メンター募集に関する工夫

メンターに対して、九州工業大学工学部の工学系総合科目である「理数教育体験Ⅰ」(1単位)、および「理数教育体験Ⅱ」(1単位)の単位認定を行うことで、学生の積極的な応募を促進した結果、予想を上回る希望者(全21名)となり、潤沢なメンターのリソースを活用することができた。
「理数教育体験」は、全学年対象の選択科目として既に構築されていた科目。理数関連イベント等に参加し、小学生等に教示することにより、単位を認定する。本実証事業を行うに際し、学内の科目担当者と協議し、今回のプログラミング教育がシラバス(巻末資料①参照)の内容に準じていると判断された。
本実証事業でメンターとして授業を実施、およびレポート提出で単位認定(採点)を行った。

2.1.6 メンター研修期間

平成28年10月19日および11月2日
小学校向けメンター育成および高校向けメンター育成を別日で実施。各4時間の研修を行った。

2.1.7 メンター研修方法

九州工業大学にて実施。実証団体(アーテック)から講師として1名参加。ロボットの基本的な使用方法及び1~5回の授業概要を動画で解説した後、指導者用テキストを用いて説明。実際の授業を想定し、子ども役とメンター役に分かれて実施した。50分間のロールプレイングの後、5回目の授業のロボットコンテストを体験。
小学校向け、高校向けともに同じ方法で実施した。
研修の様子に関しては「メンター育成過程動画」を参照。

2.1.8 メンター研修に関する工夫

1.指導者用テキストによる解説
子どもがつまずきやすいポイントや注意するポイントを記載した指導者用テキストを用意。メンター研修時に小学校(高校)用テキストと指導者用テキストを見比べることで、指導上の留意点を把握させた。
例)小学校用テキスト 8ページより抜粋

2.授業のロールプレイングの実施
研修の終盤でサブメンター役1名と子ども役1名に分かれて1対1でロールプレイングを実施。サブメンターの中から1名をメインメンター役として指名し、授業の進行を体験させた。学生同士が互いに子どもへの言葉がけや伝え方を指摘しあうことで、メンターとしてのスキルの向上を図った。

<研修風景>

3.メンター育成用動画の視聴
メンター育成動画として3本の動画を用意。実際の授業の流れと全体像を把握した。

  1. 教材(ロボット及びプログラミングソフトウェア)の概要説明動画
  2. 授業の概要説明動画
  3. 5回目の授業で行うロボットコンテストのルール説明動画

2.1.9 他地域にも再現可能なノウハウ

指導者用テキスト、メンター育成動画、メンター育成過程のダイジェスト動画などのコンテンツを用意することで、ロボットを用いた基礎的なプログラミング指導スキルを数時間の研修で体得できる。

2.2 児童生徒の募集・学習について

2.2.1 児童生徒の募集期間

平成28年7月20日~10月30日

2.2.2 児童生徒の募集方法

祝町小学校: 九州工業大学出前授業から発展した交流の中で、ロボットクラブの子ども(小学生)に告知してもらうよう顧問の教諭に依頼
児童文化科学館: 市政だより・館だよりにて一般公募(7.2参照)
戸畑高等学校: 本学研究室と連携したプロジェクトに参画している戸畑高等学校に加え、北九州市内SSH指定校に告知を行った(最終的に東筑高校・小倉高校・八幡高校・戸畑高校の4校が参加)

2.2.3 児童生徒の対象学年

小学生 4~6年生
高校生 1~2年生

2.2.4 対象学年の選択理由

祝町小学校:本実証事業においては、祝町小学校のロボット部の子どもを対象にして授業を行った。児童文化科学館:2人1組もしくは個人でプログラミングを行うため、基本的なPC操作ができる小学校中学年以上とした。

2.2.5 児童生徒募集に関する工夫

児童文化科学館:

  1. 科学館の定期広報誌「館だより」に掲載し、北九州市内の全小学校・特別支援学校に添付送信した。
  2. 来館者及び他講座参加者への応募チラシの配布。(7.2参照)

2.2.6 児童生徒の学習期間

祝町小学校: 平成28年9月16日~11月25日のうち5日  1回45分授業
児童文化科学館: 平成28年11月6日~12月25日のうち5日  1回50分授業
戸畑高等学校: 平成28年11月4日~12月16日のうち5日  1回60分授業

2.2.7 児童生徒の学習内容

【小学生】
第1回 身の回りの制御システム ~ソフトウェアの使い方・ロボットカー組み立て~
第2回 右折・左折のプログラミング
第3回 課題コースを用いたプログラミング演習
第4回 ロボットコンテストに向けたプログラムの設計・作成
第5回 ロボットコンテストと発表

【高校生】
第1回 身の回りの制御システム ~ソフトウェアの使い方・タッチセンサー・条件分岐~
第2回 計測・制御システム ~赤外線フォトリフレクタを用いた衝突回避システム~
第3回 アームロボット組立 ~サーボモータを用いた産業ロボットモデル制作~
第4回 ロボットコンテストに向けた機体およびプログラムの設計・制作
第5回 ロボットコンテストと発表

2.2.8 児童生徒への講座に関する工夫

指導方法について

  1. メインメンターが進行役を務めることで、学校側の指導者(先生)なしで、プログラミング授業を行えた。
  2. 画像等で手順を見本的に解説したテキストや、出力・配布するだけで内容の振り返りや次の課題への取り組みが行えるワークシートの整備により、指導に慣れていない大学生でも、子どもや保護者、先生方の満足度が非常に高い授業を展開することが実証できた。
  3. 下記内容はアンケートより抜粋
    メインメンター:
    • 授業間隔があくことが多かったので、授業の冒頭で前回の内容を簡単に説明した。
    • 子ども自身が工夫した点を紹介しながら、答え(プログラミング)は一つではないことを伝えた。
    • 自分以外のチームのロボットカーの動きも見てヒントを見つけるよう声掛けを行った。
    • 解説が長くなると集中力が切れてしまいがち。なるべく手を動かすような流れにコントロールした。
    • 毎回授業の最後に、難しかった点、工夫した点、感想などを自由に発表してもらった。
    サブメンター:
    • 子どもに目線を合わせられる立ち位置(同じか低い位置)になるよう注意した。
    • 子どもに理解しやすい言葉を選びながら伝えるように心がけた。
    • 指示(答え)ではなく子どもが自主的に取り組むよう、声かけを行った。
    • 子ども自身が考えたプログラムが間違っていても、その場で修正せずあえて一度失敗させるようにした。
    • 手の止まっている(指示がないと前に進めない)生徒には、積極的に声かけや質問を行った。
    • 「なぜ予想と違う動きになったのか」「原因はどこにあるのか」の問いかけを行い、自分でプログラミングの修正を行うよう指導した。
    • プログラムブロックの一つ一つがどう動くのかを一緒に確認しながら進めた。
    • 同じ目線で考え、指導するというより一緒に取り組んでいる感覚を持ってもらうようにした。
    • 全て自主性に任せてしまうと逆に作業に飽きてくる子どもも見受けられたので、ヒントを与えるようにした。
    • 授業開始前に「いつもは何をして遊んでいる?」「好きなゲームは?」など別の話題で親近感を持ってもらうようにした。

小学校用テキストについて

  1. 教材を開発したアーテックでフランチャイズ展開しているロボット教室「エジソンアカデミー」の教材カリキュラム作成ノウハウを生かし、小学校中学年以上を対象にしたテキストを作成。
  2. 算数科で学習した内容(角度や比例の概念)を活用する場面を設定したテキスト内容にしている。

  3. プログラミングだけでなく、身の回りのロボットの仕組みも学べるテキスト内容にしている。

  4. グループ学習ができるように、随所に「話し合おう」「発表しよう」という箇所を用意。

高校用テキストについて

  1. 情報科の学習指導要領の内容に従って作成しており、高校の授業にそのまま取り入れられる。
  2. 4、5時間目に使用するワークシートでPDCAサイクルにのっとって試行錯誤できるようにしている。
    →プログラミングを通して、論理的思考力が身につく内容にしている。

2.2.9 他地域にも再現可能なノウハウ

  1. プログラミングの専門知識がなくても、テキストやカリキュラムを用意しているので、短時間の研修や授業準備で小学校及び高校で指導ができる。
  2. 1回の授業を45分から60分で設定したカリキュラムにしているので、小学校・高校において授業内での導入が可能。
  3. 小学校用テキストにおいては、後述4.3で記すように、自ら振り返りができるようなテキストにしているので、サブメンターの数が少ない場合でも取り組みやすい。

3. モデルの訴求ポイント

3.1 モデルのねらい・意義

大学

  • 継続的なメンター人材の育成を目的に、メンター活動を単位認定することで大学生側の参加の動機付けとモチベーション向上を図った。

小学校・高校

  • 小学校においては算数科目、高校においては情報科目と関連をもたせた内容にすることで、既存教科の枠組みの中でプログラミングを扱うことを視野に入れている。
  • プログラミングに不可欠な論理的思考の基礎を、大学生メンターの力を借りながら身に付けることができる。
  • 5回目の授業のロボットコンテストは、学内だけでなく他校との交流として行うことができ、波及効果が見込める。

メンター

  • 大学生は単位認定というスタンスから高い意識で従事することができる。
  • 将来不足することが見込まれるプログラミング教育の指導に関わる人材について、大学生がメンターとしてサポートすることが可能となる。

3.2 モデル実施により得られた成果

3.2.1 受講した児童生徒の変化

<メンター対象アンケートより>

  • 最初は緊張していたが、プログラムを組んでいく中で自分から様々な工夫を行い、メンターともよく話をするようになった。
  • 他者とコミュニケーションをとることが苦手な子どもも、実際にロボットカーを走行させる中で積極的に質問、発言するようになった。
  • 一度つまずいても諦めずに何度も試行錯誤するうち、のめり込む様子が見て取れた。
  • 2人1組でロボットカーを製作する際、最初は遠慮がちだったが試行錯誤するうち活発に意見を出し合い楽しく取り組むようになった。

3.2.2 担当したメンターの変化

  • 当初はメンターも緊張していたせいか、子どもが声かけに応じてくれないケースがあったが、授業とは関係ない日常の会話をする(前出2.2.8参照)などをして、子どもが受けいれやすい雰囲気を作ったり、分かりやすい言葉を選びながら対応するなど各自の工夫が見られた。
  • 指導するというスタンスから、一緒に考え取り組む姿勢にシフトすることで、子どもと達成感を共有しながら自身も意欲的に取り組んでいる様子が見られた。
  • 一方的に声掛け、質問をするのではなく、個人の性格や進捗状況に合わせて対応するようになった。
  • ヒントを与え過ぎたと感じた時は、子ども自身に考える時間を与え、答えを急がせないよう配慮していた。
  • 自身が担当して気付いた問題点をメンターで共有し、対応のヒントにしていた。

3.2.3 保護者の反応(実施アンケートより)

  • 毎回とてもこの授業を楽しみにしていて、今後も続けたいと本人は希望している。このような機会を是非増やしてほしい。
  • 今までで一番楽しいイベントだったようで、自分もPCが欲しい様子だった。
  • 受講する前よりPCなどに興味が出てきたようで、自分で自宅のPCを操作するようになった。
  • 大学生メンターが子どもの目線で指導してくれるおかげで、普段の勉強のイメージがなく楽しく学べている。
  • 今回公募により参加させてもらったが、小学校でもこのように大学生から学ぶ機会を増やしてほしい。

3.2.4 教員の反応(祝町小学校ロボットクラブ顧問)

  • どの生徒も通常の授業より集中して楽しく取り組んでいる様子が伺える。
  • メンターの対応が丁寧で、疑問点などその場で一緒に考え解決できるので、ストレスなく進められている。
  • 子ども自身が自分で問題解決しようとする姿勢が、顕著に表れている。
  • 将来的にこのような取り組み(メンター指導)が継続して行われることを強く希望する。
  • プログラミング教育が本格的にスタートすれば、現在の教員だけで対応することは極めて困難。大学生メンターのサポートは人的確保のみならず子どもにも非常に良い影響が期待できる。大学で単位認定のシステムが確立されるのであれば、今後の連携を含め是非検討してもらいたい。

3.2.5 協力大学、団体等の反応

《北九州市立児童文化科学館》

  • 一般公募(市制だより)で参加者を募ったが、先着順としたためキャンセル待ちが出るほど関心の高さが伺えた。一度に対応できる人数が限られるようであれば、年2回開催など対応してもらえるとありがたい。
  • プログラミング教育導入については保護者の関心も高く、可能であれば親子で取り組めるような企画を希望する。
  • 科学館の年間スケジュールに合わせ、早い段階でのスケジューリングの必要性を感じる。
  • 学校の授業とは異なり、欠席する生徒についてフォローが難しいと感じる。回数が少ないため初回欠席するとついていくのに難しいケースも見られた。継続して参加しやすい日程を組むなど、検討の必要もあるのではと感じた。

4.モデルの改善点

4.1 実施にあたって直面した困難

  1. 1.クラウドをうまく活用できなかった。
    →本実証事業においては、ロボットの自宅への持ち帰りを行わなかったため、自宅での復習等クラウドの活用が行われなかった。授業毎に、大学生メンターへ分かりにくかった点や疑問に思ったことを質問するという方法で活用を試みたが、効果的に使用できなかった。
  2. 子ども(小学生)とメンターとの関係の構築に時間がかかった。
    子どもへの指導経験がないメンターも多数おり、子どもとの接し方がわからず、コミュニケーションをうまくとれていない場面が序盤では見受けられた。
    →最初の1時間目の授業の前に、子どもとメンターとの間でアイスブレイクするための時間が必要。
  3. 小学校のパソコンや高校のパソコンにソフトウェアをインストールすることができなかった。(プログラミングソフトはインターネットより無料ダウンロードできるようになっているが、学校のパソコンの仕様上インストールできなかった。)
    →九州工業大学からあらかじめソフトウェアをインストールしたタブレットPCやノートPCを貸し出して対処した。

4.2 実施を通して把握した反省点

  1. メンター研修講座のみでは子供に指導することへの不安を払拭できなかった。

  2. メンター向けアンケートより、「時間の関係で、生徒役と補助役のどちらかしかロールプレイングできなかった」との声があがった。
  3. PCエラーやアプリのエラーへの対処が指導できていなかった。

4.3 モデル普及に向けた改善案

  1. テキストの内容に関して
    小学生用テキストは実証事業を踏まえて修正を加えた。本実証事業においてはメンターの数が多かったこともあり、メンター1名で子ども2名を見ることができたが、実際の学校現場で授業を行う場合は、指導者1名で30名前後を見ることも考えられる。そのため、子どもがどこで失敗したか、なぜ失敗したのかを自ら振り返ることができるように生徒用チェックシートを新たに用意した。

    生徒用チェックシート

  2. PCエラーやアプリのエラーへの対処が指導できていなかった。
    →アーテックのホームページ上にFAQを用意。メンター研修講座の際に説明の時間を設ける。
    ■プログラミングソフトウェアのトラブルシューティングページ
    http://www.artec-kk.co.jp/studuino/ja/faq.html

  3. メンターの指導方法のばらつきに関して
    クラウド(SNS)を活用して、授業の振り返りを行う。各メンターの失敗談・成功談を共有することで、メンターの指導方法のばらつきをなくす。
    メンター研修講座時に、ティーチングとコーチングの説明を徹底する。
    また、ロールプレイングを1度だけでなく、最低2回(サブメンター役と小学生役を両方体験)することで、指導のポイントを熟知させる。

5.モデルの将来計画

モデルはメンター募集を大学での単位認定制度にしているため、単発での募集にならず、継続した募集が可能になる。また、本事業を実施した北九州地域に関しては、九州工業大学が従来年間20校ほど小学校や高校に対し、出前授業を実施しているため、継続的な実証が可能である。
また、教材開発元のアーテックでは従来から全国の小学校・中学校・高校・大学へ教材を販売しているため、平面展開を学校、教育委員会へ働きかけることも容易である。その際に課題になるのがロボットの予算であるが、当社からはロボットのレンタルパッケージも販売もしており、1人1000円ほどの予算で備品ではなく生徒費で使用することが可能である。
今回の実証で教育現場中心に問い合わせが増えており、小学校、高校共に出前授業も含め実施校を増加していく。

6.参考添付資料

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