若年層に対する
プログラミング教育の普及推進報告2017

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コース選択制による創造的プログラミング教育の普及推進

株式会社D2C・ライフイズテック株式会社

H28年度当初予算にて実証実施

1.モデルの概要

1.1 モデル名称

愛知県豊田市 4中学校合同による「コース選択制による創造的プログラミング教育の普及推進」モデル(以下「本モデル」という。)

1.2 モデルの全体概要

はじめに(背景)

豊田市では、学校教育情報化プランを2016年3月に策定し、平成32年までに生徒1人1人が、ICT教育を通じて、「習得」「活用」「探究」を軸に個人の資質能力を身につけるために、「どのように学ぶか」に力点を置いた授業設計を目標に掲げている。この状況下で、ICTを活用した学習機会の提供と共に、プログラミング教育を実施することで、今後の豊田市におけるICTを活用した教育、プログラミング教育の環境整備、ノウハウの構築が背景としてある。

プログラミング講座の実施概要

ライフイズテックのプログラミング教育に関する実績、ノウハウ、知見、教育カリキュラム、コース、教材等を活用し、D2Cが本モデルのインタラクティブな学習機会の企画、設計、運営、管理、豊田市内の教育に関わる関係者等とのコーディネートを実践した。

図1 実施概要と実証団体の特徴

その上で、総務省プログラミング教育実証事業(以下「本事業」という。)の目的を踏まえ、豊田市にてプログラミング教育の普及を目的における「メンター育成」と「プログラミング講座」の観点より本モデルの目的を整理し、豊田市および近郊のエリアによる新規メンターの発掘と育成、豊田市内の中学生を対象としたプログラミング講座を実施した。

メンター育成
  1. 豊田市および近郊エリアの大学生を対象としたメンターの発掘
  2. ICTを活用した反転学習と継続した振り返り学習機会の仕組みづくり
  3. 短期にメンター育成を可能とする教材の作成と運用
  4. 大学生メンターの地域特性や傾向の調査
  5. 育成した大学生メンターをハブとした、更なるメンターの発掘
プログラミング講座
  1. 豊田市内の中学生を対象としたプログラミング講座の実施
  2. 学生自らが選択可能なプログラミング講座を設計し、限定されない広範囲にプログラミング教育に触れる機会を創出し、興味・関心の醸成を図る
  3. プログラミング講座実施後の継続した学習機会の提供方法の検討
  4. 協力校や関係者等への成果報告と、継続したプログラミング教育の実施に向けた課題整理
  5. 講座受講者の特性と傾向の把握
  6. 実施概要

プログラミング講座の実施に向けた取り組み

豊田市教育委員会教育センターの協力のもと、中学生を対象とするとともに実施対象校の選定においてより幅広くプログラミング教育に触れる機会を創出するため、豊田市内の各中学校に対して本事業の目的の周知・普及を行い、教育に関わる様々な関係者等の意見を聴取し調整を行った。結果、豊田市内の4中学校のご協力のもと、4中学校を対象とした約40名の学生を一同に集めた合同プログラミング講座の実施へと繋がった。 また、プログラミング講座のコースを、①アプリケーション開発、②ゲームプログラム開発、③WEBデザイン講座の3つからなるコースを企画・設計し、学生自らが興味・関心のあるコースを選択することを可能とした。

図2 プログラミング講座の実施に向けた取り組み概要

2.モデルの内容

2.1 メンターの募集・研修について

2.1.1 メンター募集期間

2017年9月~2017年10月

2.1.2 メンター募集方法

愛知県内の各大学にて以下の要領にて募集を実施

  • 大学内の掲示板による募集
  • 大学内での、案内チラシの配布
  • 大学内の研究室や教授等からの周知
  • ライフイズテック社が保持する既存メンターからの募集
  • ホームページやSNSを活用した募集
  • 大学内での説明会の実施
2.1.3 メンター募集対象(メンター種別)

■必須条件

  • 愛知県内の大学に在籍する大学生、専門学生、大学院生
  • 学部、専攻、学年、年齢は問わない
  • メンター育成やプログラミング講座への通学が可能
  • 今後のプログラミング教育に関して前向きに行動を移せる人材

■上記の内容に加え、メンターとしての適正を以下の様に整理し個別面談を通して選定した。

  • ITを通して社会に影響を与えたい
  • プログラミングスキルを身につけたい
  • プログラミング教育について学びたい
  • 中高生への教育について興味がある
  • プログラミングスキルを、子どもたちへの教育に活かしたい
  • 教育やプログラミングスキルを通して地域活性に貢献したい
2.1.4 メンター種別の選択理由

本モデルの進行または今後の豊田市における継続したプログラミング教育の普及を見据え、以下の観点よりメンターの種別を整理した。

  • 身近な話題等を通してコミュニケーションを円滑にするため、愛知県内の大学、専門学校、大学院とする
  • 実際にプログラミング講座を受講する中学生が親近感を感じプログラミング教育を学び、将来の自分の進路等をイメージしやすくするため学生とする
  • 学生間のネットワークを活かし、新規メンターの発掘、拡充を図るため

図3 メンター種別の選択理由

2.1.5 メンター募集に関する工夫

大学等の校内の掲示板を利用する他、既存のメンターからの口コミや紹介などを利用することで、プログラミング教育に関しての興味・関心を醸成することができ、メンター募集への不安が緩和し参加意志のモチベーションが上がる。 また選考過程において、募集対象となる学生の属性を事前に分けて面談等を実施することで、個に対応した応対が可能となる。学生の属性としては、技術的な思考性か教育的な思考性かに整理し、技術的な思考性の場合はファシリテーションやコミュニケーションを学ぶ研修がある旨を伝える。一方で教育的な思考性の場合はプログラミング技術の基礎から応用までの教材や教科書の有無を伝え、また先輩メンターや講師等からのフォロー体制が研修時やインターネットを使用したSNS等による機会がある旨を伝え、不安を払拭した。先ずは、馴染みのないプログラミング教育のメンターという役割に対して不安を取り除く試みが必要となる。

2.1.6 メンター研修期間

2017年11月~2017年12月

2.1.7 メンター研修方法

■4日間(累計40時間)のメンター育成プログラムを実施し、集合研修の他WEB教材による反転学習を実施

Day1(初日):集合研修

   
  • チームビルディングの実践、ファシリテーションの基礎
  • コース別(①アプリケーション開発、②ゲームプログラム開発、③WEBデザイン)プログラミング技術の基礎

Day2:自習(反転学習)

   
  • 教材・教科書の履修
  • コース別に実際にプログラミングによるオリジナル作品の作成

Day3:集合研修

   
  • オリジナル作品の作成
  • オリジナル作品のプレゼン
  • 想定される問題等の重要事項の検討と対処法
  • 実際のプログラミング講座を想定したファシリテーションの開発とロールプレイ
  • プログラミング講座実施場所の視察

Day4(最終日):集合研修

   
  • プログラミング講座の本番(実践)

図4 メンター育成研修の流れ

 
2.1.8 メンター研修に関する工夫

1つ目の特長は、IT技術のスキルアップと並行して、ファシリテーション・チームビルディング・現場での対応などの教えるスキルの向上に注力したことである。プログラミング技術をただ教えるのではなく生徒の躓きを見つけ、できたことはしっかりと褒め、作品をつくるモチベーションに繋げていく「学びのファシリテーション」「創造的な学びを促す技術」を持つメンターへ育成するため、研修の中では様々なディスカッションや体感的なグループワーク、具体的なシーンを想定したロールプレイなどの時間を多く設け研修を実施した。 2つ目の特長は反転学習を意識した研修にした事である。集合研修の際は、ディスカッション・グループワーク・個別フィードバック・講師への質問など、その場にいないとできない事に注力し、新しい教科書の履修やオリジナル作品の個人作業は自宅で行った。また、自宅での作業中の質問にはSNSを利用し講師が随時回答を行なった。

2.1.9 他地域にも再現可能なノウハウ

■メンターの発掘
地域の学生を主体に、学生の属性別にメンターとして育成していくことで、その地域内または学校内でメンター同士の紹介によりコミュニティ化していく。そこで、メンターとしての経験や実績等により階層化していくことで、プログラミング技術や教育(ファシリテーションやコミュニケーション等)技術において競争が生まれ活性化する。また、メンター同士の技術や課題、ノウハウなどの情報交換や共有を可能とするプラットフォームまたはSNS等を設けることで、そのコミュニティの更なる活性につながる。これらの体系化されたメンターの発掘、募集、育成、プログラミング教育機会の実践、その後の管理については、その他の地域においても再現可能と考える。

■メンターの育成
プログラミング教育のメンター育成として、事前にプログラミングの技術と教育(ファシリテーション、コミュニケーション)技術との2点に整理し育成カリキュラムを用意する必要がある。プログラミング技術においては、メンター候補となる学生の興味関心やスキル、学部学科、専攻等の属性に応じていくつかのコース(教材・教科書等)を用意しておく必要がある。そのため本モデルでは、①アプリケーション開発、②ゲームプログラム開発、③WEBデザインからなる3つのコースを用意し、メンター候補生からの選択制とした。教育技術においては、実際のプログラミング教育のメンターを実施するまでは大きな不安を抱えるため、ファシリテーションの基礎から応用、想定される質問等のQ&A、実際のプログラミング教育場面の動画や画像による事前の学習、ロールプレイ、円滑に進行するためのチームビルディング等、コミュニケーションを円滑に取るためのカリキュラム、教材、教科書を用意する必要がある。 本モデルでは、上記をカリキュラム化し、4日間(累計40時間)の集合研修、WEB教材を活用し反転学習を実施したが、これらのノウハウはその他地域においても再現可能と考える。

図5 新規メンターの発掘の流れ

2.2 児童生徒の募集・学習について

2.2.1 児童生徒の募集期間

2017年10月~2017年11月

2.2.2 児童生徒の募集方法

豊田市内の各中学校から本モデルの案内資料を配布または掲示板等を通して告知し募集を募った。

2.2.3 児童生徒の対象学年

中学生(対象学年は不問)

2.2.4 対象学年の選択理由

プログラミング講座で使用する教科書や教材、ツール(パソコンやタブレット)、ソフトウェア、開発言語等を生徒自身のペースと裁量で進め、且つ集中力を持続させるためには中学生以上を対象とする必要がある。また、個人の独創性をもって開発を進めていく上で、ある一定の常識や知識・経験が必要となり、プログラミング講座を通して今後の進路や社会にどのような影響や役割があるかを理解させるためにも、中学生以上が望ましいと言う理由から対象を中学生とした。

2.2.5 児童生徒募集に関する工夫

豊田市教育委員会教育センターの協力のもと、市内の中学校へ本事業の目的の説明を行い、様々な関係者等の意見を聴取し調整を行い、ご理解・ご協力を得た4つの中学校を対象に約40名の学生の応募からなる、合同プログラミング講座の実施へと繋がった。

2.2.6 児童生徒の学習期間

8時間の講座(1日間)
学生は自分の興味・関心のあるコースを選択し受講

2.2.7 児童生徒の学習内容

プログラミング講座のコースを、①アプリケーション開発、②ゲームプログラム開発、③WEBデザイン講座の3つからなるコースを用意し、学生は自分の興味・関心のあるコースを選択し受講する。

図6 プログラミング言語・教材

iPhoneアプリ

  • 基礎:カウントアプリ
  • 応用:電卓アプリ
  • 身につくスキル:アプリを使って自分の身の回りをどのように変えていくのか、という社会性の高い思考力関数やアルゴリズムなどの数学的思考力

ゲームクリエイター入門

  • 基礎:2Dカーゲーム
  • 応用:スーパーマリオ風横スクロールゲーム、リズムゲーム
  • 身につくスキル:ゲームのステージ作成、ルール作り、ゲーム性を考えることで身につく企画力

Webデザイン

  • 基礎:web教材を使っての基礎知識(CSS、html)の習得
  • 応用:自己紹介ページの作成
  • 身につくスキル:ホームページ製作上で、第3者の視点に立ったデザイン力や表現力

図7 プログラミング講座実施内容と時間割

2.2.8 児童生徒への講座に関する工夫

講座を進める上で、プログラミングの開発に入る段階やコーディングをする段階で行き詰まる事や、講座の終盤で集中力が切れることにより進行が滞ることがあるため、適宜自由に休憩をとらせてリフレッシュさせる事を推進した。また、生徒本人が好きなものや興味・関心のある事をメンターが引き出し、生徒個々のアイディアを作品作りに反映するようにコミュニケーションをとり、時間内に作品を完成させる気持ちを引き出すため、メンターが丁寧な対応可能な範囲を配慮し1グループ6名で構成した。グループワークを推進することにより、生徒間で協力しながら作品作りを行う等の「協調的な学習」へ促すことが可能となる。 プログラミング講座の冒頭に動画教材を使用し、自分たちが学ぶプログラミング教育が社会にどのような影響があるかを理解することで、作品作りにおいて積極的に取り組みことが可能な「前向きな学び」の環境を構築する事が可能となる。

本モデルの主な講座の特徴

  • グループワーク形式で実施
  • コース別の開発は教科書を使用し自らで進める。必要な際に質問を受け付ける(自発性の醸成)
  • 適時、個別の課題設定を設けるカリキュラムの設計
  • 講座終了後、自分の開発した作品を他チームへプレゼン
  • プレゼン終了後は、開発したお互いの作品を体験する時間を設置
  • 自分たちが学ぶIT・プログラミングの未来について、映像(動画)を通して理解する
  • チームの協調性を高めるため、チームビルディングアクティビティを実施
  • 自分たちが学んだプログラミングが社会にどのような役割があるか、映像(動画)とスライドを使用し理解

2.2.9 他地域にも再現可能なノウハウ

先ずは、プログラミング講座全体のモデルケースとして、地域の学校間の協力のもと合同開催によるプログラミング講座を通して、より多くのプログラミング教育に関わる様々な関係者(教師、保護者、教育委員会、地域関係者等)が聴講し、プログラミング教育の進行管理方法や教育方法、教科書や教材の内容、メンターの役割・関わり方等を学ぶことで、地方における今後のプログラミング教育の在り方について周知・普及すると考える。また、より多くの生徒に対して、プログラミング教育を体験する場の提供が効率化する。 単なるプログラミング教育の体験にとどまらないように、ITの進歩により自分たちの身の回りがどのように進化しているのかを学ぶ動画教材を加える事や、自己紹介に脳内メーカーを使用する。また、チームビルディングを目的としたプログラムをカリキュラムに加える等は、その他地域の実際のプログラミング教育の場においても再現可能なノウハウと考える。

3. モデルの訴求ポイント

3.1 モデルのねらい・意義

地域に根ざしたプログラミング教育の機会が拡大するように、当該地域の教育関係者との継続した検討機会を設けていく上で、本モデルは当該地域の学生を対象に集合研修やWEB教材による反転学習を用いたメンター育成や、複数の学校の生徒を集め合同でプログラミング教育を実施し、生徒自身が興味・関心のあるコースを選択する事が可能なプグラミング講座を実施するなど、今後のプログラミング教育の運営方法や教材等からなるコース設計、メンターの育成方法の方向性を示すことができたと言える。 プログラミング教育に関する情報流通を今後が促進させていく過程で、本モデルは当該地域内の学校間での情報の交換や共有に繋がり、地域全体を巻き込んだプログラミング教育の普及・推進の活性化に繋がる。これらは、東海エリアまたはその他エリアへも再現可能と考え、プログラミング教育の普及・推進に向けて本モデルの普及活動を積極的に行なっていく事が、本事業における本モデルの価値と考え、今後のねらいでもある。

図8 本モデルの成果と意義

3.2 モデル実施により得られた成果

3.2.1 受講した児童生徒の変化

本モデルへ参加した生徒の特徴として、プログラミングに関して何らかの興味・関心があった事が分かる。ただし、多くの生徒はプログラミング自体の経験が無く、プログラミングの経験を希望し今回の講座へ参加するきっかけとなったようだ。

Q.もともと「プログラミング」という言葉を知っていましたか。近いものを一つ選んでください。

図9 生徒向けアンケート

本モデルのプログラミング講座を通して、自らの考えにより作成したプログラミングにより制作物が指示通りに動くことや、数学で学んだ事が活かせることが出来た等、今後もプログラミングを続けていきたいと言う生徒が多く、本モデルを通してプログラミング教育への興味・関心の醸成に繋がった。

本モデルに参加した学生の感想(一部)

  • 学校の授業に役立つソフトを開発する。
  • 不便だと思うことを解決できたらいいなと思う。
  • 今日学んだことを何かに試してみつつ、もっとできることを増やしいつか自分だけのアプリを作りたい。
  • 病気の時に、どのような様子で、熱は何℃かということを入力すると、症状に近い病名を出してくれるアプリ
  • 今日の経験を生かしパソコンを利用してホームページに適した画像・資料・文章をたくさん加えたりしたい
  • パソコンの使い方が良くわかったので学校でも使えそうです。
  • 畑にドローンなどで農薬をまくプログラム
  • 簡単に、世界中の人とシェアできるのを実感した。
  • 普通の人でもアプリゲームが作れることがわかりました。
  • ゲームをする側だけでなく、みんなが楽しいと思えるようなゲームを自分で作ろうと思いました。
  • アプリやゲームをするだけでなく、そのゲームなどの仕組みや作り方という視点を持てた。

一方でパソコンのボタン操作や使い方が難しかったとの意見があがっており、一人ひとりの個に合わせたプログラミング教育を推進するのと同時に、プログラミング開発に専念できるように教材やメンターからのサポートに反映する事で、更にプログラミングへの興味・関心が推進されていく事が期待される。

3.2.2 担当したメンターの変化

本モデルのメンター育成研修を経て、プログラミング教育を実施する上でのメンターとしての技量や心構え等、教育効果を高められることが明らかになった。 本モデルのメンターの多くは、ある一定のプログラミングに関する技術は持ち合わせていたが、やはり実際の生徒にメンターとしての役割を担うことが出来るか不安を抱えていた。それは、指導面において、特にコミュニケーションの取り方や進行を行う上での対応力、ファシリテーション力である。 メンター育成研修による学習やロールプレイを経てプログラミング講座の実習経験を行なった結果、高いIT技術と学生の学びをファシリテートするスキルがかなり高いレベルまで習得できた事をメンター自身が実感している。当然のことながらプログラミング講座の経験が少ないため課題は残るが、生徒から出てくる様々な質問に対してスムーズに答えられる技量や知見を高めていく余地は十分にある。 今後このような機会があり、時間と場所の都合が合えば積極的に参加したいという意見もあがっており、学校現場へ出張しプログラミング教育に携わりたいという意思も確認が出来た。また、大学内においてまだまだプログラミング教育のメンターは認知がひくいため、今回の経験をもとに友達等周辺に紹介していきたいと言う意見もあがっており、本モデルを通して周囲へ影響を与えていく存在としての変化もあった。

3.2.3 保護者の反応

子どもがプログラミング教育に興味・関心はあるものの、実際に体験できる場が無かったため、本モデルへの期待は高く保護者自身がプログラミング教育に対しての興味・関心を持つ結果に繋がった。 主な保護者の反応として、プログラミング講座後、自宅で復習をしている・パソコンを触る機会が増えた等の子どもたちの変化を目の当たりにし、継続したイベントを行って欲しいという要望が多く出ている。また、同じ興味を持つ他校の子どもたちと接することが出来た事で子どもたちの成長にも繋がるという意見もあがっており、合同開催によるプログラミング講座の運営方法も評価される結果となった。

図10 保護者向けアンケート

3.2.4 教員、教育委員会の反応

学校教育においてプログラミング教育を進めていく状況下で、本モデルを通して主に進行方法や教材、メンターとの関わり方について評価をいただいた。 実際の学校内のプログラミング教育においても技術指導はメンターに任せ授業の進行は教師が行うことで、課題である教員自身のプログラミング技術を補填することが可能となり、プログラミング教育を推進可能と言う意見が多くあがっている。また、プログラミング教育の普及の一環としてコンピュータ部などの部活動においても、同様に技術指導をメンターに任せることによりより一層推進されるという意見を頂いており、学校教育においてはプログラミング技術指導の補填をどのように行うかがプログラミング教育の推進上の課題と考える。 一方で、学生は進路を考える上で成績を気にする面もあり、学校教育においてプログラミング教育を行なっていく過程で、プログラミング的思考性の評価について定義・基準をどのように設けて行くか課題と捉えている教員は多い。また、プログラミング教育を行っていく上で、教材、教具、アクチュエータ等の情報が限定的なため、情報提供の場や導入後のサポートの拡充等の要望も多く、プログラミング教育の普及推進と共に対応策の検討を進めていく必要があると考える。

3.2.5 協力大学、団体等の反応

プログラミング講座の実施にあたり協力団体であるライフイズテック株式会社より、本事業の機会により得ることが出来た成果を最大限に活かしていくことで、豊田市及びその他地域でも「IT教育のエコシステム」構築のきっかけとなるとし、今後も協力をいただける意志のもと協力関係を継続しプログラミング教育の普及推進を進めていく。

図11 地域のIT教育の推進概要

一方、豊田市内の教育関係者や学校間の調整をいただいた豊田市教育委員会教育センターからは、本事業のプログラミング教育を通してICTを通した学習機会の提供に繋がると期待しており豊田市によるプログラミング教育の在り方の検討と共に、本モデルによるプログラミング講座の継続した取組みについてご要望をいただいている。

4.モデルの改善点

4.1 実施にあたって直面した困難

豊田市教育委員会教育センターや学校関係者等の様々な教育関係者の協力のもと、本モデルのプログラミング講座の運営や教材、メンターの育成等に関する必要な要件を検証することができた。しかしながら、プログラミング講座を実施する上で必要とする新規メンターの発掘においては困難な場面があることが顕在化した。 本モデルの新規メンターの対象を「2.1.4 メンター種別の選択理由」の理由より学生としたが、プログラミング教育のメンター職の認知度が低く、募集自体の数量を担保することが困難であった。また、学内のイベント(学園祭、試験期間等)と一定期間必要とするメンター育成研修が重複する等の理由により、参加を辞退する学生も多く見られた。 募集後の説明会や面談のステータスに入ることで、本事業の目的や意義等の説明が可能となり興味・関心を持つ事へ繋がるが、事前の新規募集段階においては課題が残る。今後は、大学等と連携し単位取得が可能なプログラムや、学生が就職活動を行う際にプログラミング教育のメンターとしての職歴が優位になるような官民一体の取組みの検討が必要となると思われる。 また、本モデルでは特別支援学校に通う中学生も参加したが、本モデルでは事前に講座を進行する上で必要な留意事項を関係者へ周知・徹底することで、一人ひとりの個に合わせたプログラミング講座を実施することが可能となったが、障害の状態や認知の特性等に応じてより一層教材等開発においてアクセシビリティの観点より検討していく必要があると考える。

4.2 実施を通して把握した反省点

実際の学校教育によるプログラミング教育を想定した際に、本モデルのように5~6人の生徒に対して1名のメンターを配置するグループワーク形式の場合は一定の方向性を示すことが出来た。しかしながら、20~30人等の多数の生徒を1名の教師でプログラミング授業を行うとした場合には困難であると思われるため、プログラミング講座の運営方法を改善する必要があると考える。

4.3 モデル普及に向けた改善案

 本モデルをより多くの地域、学校、機会にて普及させるため、より多くのメンターを発掘し育成・管理していく必要がある。そのためメンター発掘には、より一層の地域の教育関係者や大学等との単位取得化に向けた連携等を検討し、メンター職の認知度をあげていきたい。また、メンター育成面においてはプログラミング講座の進行管理役のメインメンターと、実際に生徒へ指導を行うサブメンターとの階層を分けた育成研修を実践していきたいと考える。更に、プログラミングの技術力や教育技術(ファシリテーションやコミュニケーションの技量)の進度の高いたメンター候補生が居た場合のカリキュラムや教材を用意したいと考える。 また、「4.2 実施を通して把握した反省点」であげたように実際の学校教育によるプログラミング授業を見据えた場合、これらは教師やメンターのスキルに依存するものではなく、カリキュラムや教材の特性上に課題があるため、プログラミング講座の属人性の排除を目的にプログラムの形式化を進め、本モデルの標準化を進めたい。 その上で、本モデルのように合同開催による大規模なプログラミング講座の他、学校単位等による小規模なプログラミング講座を継続していく事で、本モデルを通して更に教育関係者に対してより具体的なプログラミング教育の方法について方向性を示すことが出来ると考える。尚、その際は従来の生徒同士の教え合いを促すことで個別質問に対応する協調学習型の他、プログラミングを学ぶシステム(WEBサービス)を積極的に利用し自習型のプログラミング講座の運営を通した反転学習型のカリキュラムも運用していきたいと考える。

表1 モデル普及に向けた改善概要

改善項目 概要
メンター関連 ・大学等と単位取得化に向けたメンター募集の検討
・メンターの技量に応じた複数プログラムによるカリキュラム化
・メンターの階層化(メイン講師、サブ講師等)
プログラミング講座 ・属人性の排除を目的としたプログラムの形式化
・教材、教科書の多様化
運営方法 ・学校単位等による小規模なプログラミング講座の実施
・WEBサービスを使用した自習型(反転学習)の講座運営

5.モデルの将来計画

プログラミング教育の普及推進に向けた論点の検討

 本事業で進めている地域によるプログラミング教育の普及推進に向けた環境構築において、本モデルの成果を最大限に活用するとともに、本モデルを通してあがった課題や反省すべき点、またはそれ以外に解決すべき様々な論点について、プログラミング教育事業者および地域の様々な教育関係者を巻き込んだ幅広い議論を進めていき、プログラミング教育の普及推進を行なっていく。

表2 プログラミング教育の普及推進のための検討課題

改善項目 概要
メンター関連 ・より多くの新規メンター発掘のための募集方法
・メンターの階層化(メイン講師、サブ講師等)
プログラミング講座 ・地域内の学校を対象とした大規模な合同プログラミング講座の継続
・学校単位等による小規模なプログラミング講座の実施
・WEBサービスを使用した自習型(反転学習)の運営
・プログラミング講座の実施する場所
プログラミング教材、教科書 ・属人性の排除を目的としたプログラムの形式化続
・教材、教科書の多様化
円滑な教材提供・利用のための環境(プラットフォーム) ・反転学習を可能とするWEBサービス等の開発
・プログラミング事業者との配信方法やカリキュラム等の整理
利用環境(ネットワーク) ・学校内でプログラミング教育の実施を踏まえた、必要となるネットワーク回線の検討
・セルラー型ICT(タブレット)端末等によるプログラミング講座の実現性と有効性の検討
利用環境(端末) ・学校内または課外授業による校外(交流センター等)でプログラミング教育の実施を踏まえた、必要となるPC機器やICT機器(タブレットや電子黒板等)、プロジェクター等の確保
・ICT機器導入後の保守・メンテナンス等の整理
教育関係者・学校との連携 ・学校教育と連携する際の体制の整理とルール化の策定
・教員へのプログラミング教育の教え方、プログラミング技術の醸成
・メンターとの関わり方等、関係や体制の整理
・プログラミング教育を通した学習効果の算定
・学校教育におけるプログラミング教育の情報交換の場の構築
・プログラミング教育全般の動向等の情報交換
・プログラミング教育実施方法の具体的なデモンストレーションの実現性と有効性の整理
・プログラミング教育の教材・ツール等の情報提供と使用方法のレクチャー等の実施

プログラミング教育の普及推進の継続的な検討体制の構築

学校教育においてプログラミング教育が推進されていく状況の中で、本事業で得ることが出来た成果を維持管理し、これらを豊田市やその他地域へ提案しプログラミング教育を促すことにより、関係省庁や地方自治体、学校、大学(専門学校等含)、またはプログラミング事業者が連携し、更なる「プログラミング教育の普及推進」が効果的に実現していく事を目指す。  そのため、当団体の様なプログラミング教育を企画・実施する事業者が成果の維持管理を行い、全国の地方自治体や教育関係者、大学、関連する事業者等に対して横断的に成果の提供を行うと共に、最新のプログラミング教育手法の動向や事例、技術、プログラミング教育教材・ツールなどを紹介していくための情報提供の機会(展示会や公開授業等)を行える体制の構築を進めていく。

図12 プログラミング教育の普及推進のための体制(案)

図13 プログラミング教育の普及推進のマイルストーン(案)

6.参考添付資料

6.1 アンケート結果

生徒向け

6.1.1 あなたの学年と性別をおしえてください。
小学校/中学校/ 高校・高専など
在籍 人数
小学校 0
中学校 13
高校・高専 0
合計 13

性別:男性/女性
区分 人数
男性 11
女性 2
合計 13

年齢:12歳/13歳/14歳/15歳/16歳以上
年齢 人数
12歳 3
13歳 3
14歳 4
15歳 3
合計 13

教科 人数
① 算数・数学 4
②理科 5
③英語 3
④国語 2
⑤社会 6
⑥図工・美術 6
⑦音楽 6
⑧技術・家庭科 11
⑨体育 4
⑩その他 0
合計 47

6.1.2 もともと「プログラミング」という言葉を知っていましたか。近いものを一つ選んでください。
回答 回答数
「プログラミング」を経験したことがあった。 3
「プログラミング」を経験したことはないが、意味は知っていた。 7
「プログラミング」という言葉を聞いたことはあるが、中身まではよく知らなかった。 2
「プログラミング」という言葉を聞いたことがなかった。 1
合計 13

6.1.3 今後、プログラミングを続けたいですか?近いものを一つ選んでください。
回答 回答数
今後もプログラミングを続けたい。 10
今後プログラミングを続けるかはわからない。 3
今後はプログラミングは続けないと思う。 0
合計 13

6.1.4 プログラミングは楽しかったですか?近いものを一つ選んでください。
回答 回答数
プログラミングすることも、講座も楽しかった。 12
プログラミングすることはあまり楽しくなかったが、講座は楽しかった。 1
プログラミングすることは楽しかったが、講座はあまり楽しくなかった。 0
プログラミングすることはあまり楽しくなかったし、講座もあまり楽しくなかった。 0
合計 13

6.1.5 利用した教材(プログラミング言語や教科書)は簡単でしたか?最も近いものを一つ選んでください。
回答 回答数
簡単すぎた。 2
分かりやすくてちょうどよいぐらいだった。 9
少し難しかった。 2
難しくてついていけないことが多かった。 0
合計 13

6.1.6 今日のプログラミングで経験できたと思うことを、全て選んでください。
回答 回答数
プログラミングを通して、アプリやゲームがどうやって動くのか分かった。 11
自分なりのアイディアを取り入れたり、工夫することができた。 11
自分なりの作品を作ることができた。 10
うまくプログラムが動かないときは理由を考えて、解決策を試した。 7
自分から進んで取り組めた。 8
友達と協力して作業をした。 9
人前で作品や意見を発表した。 8
難しいところがあっても、最後まであきらめずに取り組めた。 9
自分でもの(ゲームなどのプログラムを含む)を作りたいと思えるようになった。 9
あてはまるものは一つもない。 0
合計 82

6.1.7 プログラムが思ったように動かなかったとき、どうすることが一番多かったですか。あてはまるものを一つだけ選んでください。
回答 回答数
自分でプログラムを見直し、「命令」の組み合わせをなおして、やりなおした。 2
全てのプログラムや「命令」を消して、もう一度初めからやりなおした。 0
少しずつ「命令」や数字を変えてみて、繰り返しやりなおした。 4
先生や近くの大人、進んでいる友達に教えてもらった。 7
その他 0
合計 13

6.1.8 あなたはスマートフォンのアプリやNintendo3DS(ニンテンドー3ディーエス)などのゲームは好きですか。
回答 回答数
毎日、アプリやゲームで遊ぶ。 4
週に何回かはアプリやゲームで遊ぶことがある。 7
ほとんどアプリやゲームで遊ぶことはない。 0
まったくアプリやゲームで遊ぶことはない、ゲーム機をもっていない。 1
わからない 0
未回答 1
合計 13

6.1.9 プログラミングを経験して、スマートフォンのアプリやゲームについてどう思うようになりましたか。
回答 回答数
アプリやゲームを自分で作れるかもしれないと思う。 7
アプリやゲームを作れるかはわからないが、仕組みが分かった部分がある。 3
アプリやゲームについてはよく分からなかった。 2
未回答 2
合計 13

6.2 生徒の感想

6.2.1 プログラミングで一番おもしろいと思ったところ、もっと続けたいと思ったところは何ですか。
  • 何かを作る作業でした。これからもやっていきたいです。
  • 色々とカスタマイズできるところ
  • ゲーム感覚でできることがいいと思いました。
  • ホームページの作成
  • 自分で作ったものが完成したとき
  • すぐに自分の作ったものを動かせるところがすごいと感じました。
  • 自分の指示通りに動くところ。1つの事をやるとさらにやりたいことが増える。
  • 当初難しいと思ったものの、数学で学んだことが出てきて、とても身近に感じることが出来た。黙々とコードを打つのが楽しい。自分の思った通りに動くことに喜びを感じられた。
  • 自分の好きなようにホームページを作れること。
  • 自分の思い通りに動かせたり、好きなようにコースを作れるところ。続けたい所はさらに色々なギッシュを使ってゲームを発展させたい。
  • 配置したものがその通りに動くところ。
  • カウントアプリを作ってこんなにも技術が進んでいるなんて思わなくて、とても驚きました。もっとハイレベルなアプリを作ってみたいと思いました。
6.2.2 プログラミングで難しかったところがあれば、具体的に教えてください。
  • 文字の色を変えたり、線をつなげることが難しかったです。
  • 条件文の作成
  • 写真を載せるところが難しかった。
  • 言葉の意味やパソコンのボタン操作・使い方
  • パソコンのボタン操作・使い方
  • 文字や・つづり(用語)が難しかった。macの使い方が難しい。
  • コードを打つのが難しかった。
  • ひとつひとつ丁寧に書いてありヒントなどで分からなくなっても直ぐ解る。
  • コードを打つ際のある場所がわからなかった。
  • 慣れないと色々なことが出来ないこと。
  • 視点変更やカメラのアングルの調整
  • 思うように動かせなかったり、ちょっとしたズレが気付けず動かなかったり、ゲーム中で爆発して しまった事。
  • 教材通り実施したので、難しいところはありませんでした。
6.2.3 利用した教材が分かりやすかった点、難しかった点などを具体的に教えてください。
  • 教材は読みやすく使い勝手も良かったので、わかりやすかったです。
  • 次何をすれば良いのか、マーキングされておりわかりやすかったです。
  • 文章の初めに英文字など付けるのが難しかった。
  • 本のヒントを基にホームページを作成するところが、とても内容が詳しくわかりやすかったです。逆に、パソコンのボタン操作・使い方が難しかったです。
  • 写真も掲載されており、解りやすかった。

【わかりやすかった点】

  • コードを間違えていると教えてくれる。やり方を覚えればとてもシンプルでやりやすい。とても楽しい。

【わかりにくい点】

  • ソフトの言葉が英語
  • わかりやすかった。
  • ひとつひとつの動作を記載してあったのでわかりやすかった。難しと感じることはなかった。
  • 教材を見ながら実施して、とてもわかりやすかった。
  • とても読みやすく1つ1つの解説が書いてありとてもよかったです。
6.2.4 日々の生活や学校などでプログラムを使って工夫したいと思うことはありますか。どんなことを工夫できそうですか。
  • アプリ開発をするときにどのようなものを作るか?どのような動かし方にするのかを工夫したいと思いました。
  • 学校の授業に役立つソフトを開発する
  • 不便だと思うことを解決できたらいいなと思う。
  • 今日学んだことを何かに試してみつつ、もっとできることを増やしたり、いつか自分だけのアプリを作りたいと思います。
  • 病気の時に、どのような様子で・熱は何℃かということを入力すると、症状に近い病名を出してくれるアプリ
  • 今日の経験を生かしパソコンを利用してホームページに適した画像・資料・文章をたくさん付け加えられたりしたい。
  • パソコンの使い方が良くわかったので学校でも使えそうです。
  • 畑にドローンなどで農薬をまくプログラム
  • 学校の技術や部活などで工夫できそうです。
6.2.5 ゲームやアプリについての考え方は、どのように変わりましたか?具体的に書いてください。
  • 作る人はきっと面倒なのだなと思っていたけど、それが楽しいこともあるんだなと思いました。
  • ゲームをする側だけでなく、みんなが楽しいと思えるようなゲームを自分で作ろうと思いました。
  • ホームページやアプリを作るのは、難しいとこがわかりました。
  • 使うものだけでなく、作る事が出来ることがすごい。家でもできたらソフトを使ってアプリを作りたいです。普段使っているアプリはいろんな人が考え・工夫して作り上げた作品の様なものだと思えました。
  • 様々なゲームやアプリはこうやってプログラミングしているのかな?というのが何となくわかりました。作りたかったものもこれで作れると思ってきました。
  • 簡単に、世界中の人とシェアできるのを実感した。
  • すごいと思った。
  • アプリやゲームをするだけでなく、そのゲームなどの仕組みや作り方という視点を持てたこと。
  • 作る事は難しいことなので、すごいなと思いました。
  • ゲームを作りたいという気持ちは初めから変わっていません。
  • 普通の人でもアプリゲームが作れることがわかりました。
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