若年層に対する
プログラミング教育の普及推進報告2017

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お菓子で学ぶおいしいプログラミング体験と普及活動

平成28年9月~平成29年3月 江崎グリコ株式会社

H28年度当初予算にて実証実施

1.モデルの概要

1.1 モデル名称

お菓子で学ぶおいしいプログラミング体験と普及活動

1.2 モデルの全体概要

1.2.1 全体概要

近年、様々なプログラミングツールが登場し、学び方の選択肢も多種多様に広がってきています。しかし、PCやタブレットの画面の中で操作するツールが多く、目の前に具体的な物を用意してより直感的に学ぶことができるツールは、まだまだ数少ないというのが現状です。特に、小学校低学年の子どもたちにとって、手にとって触れるツールの方が理解しやすいと言われていますが、物理的なツールをそろえるためには、購入費用が膨大になってしまうため、授業の中で展開していくには、機材をそろえるための費用がかかってしまうなど、課題が多い状況です。

そこで、江崎グリコは、次代を担う子どもたちの健やかな成長を応援する目的で、プログラミングの基礎を体験できる小学校低学年向けアプリ「GLICODE(グリコード)」を開発しました。子どもが大好きな「お菓子」にプログラミングコードの役割を担わせ、それらをルールに従って並べることでキャラクター(ハグハグ)を動かし、ゴールを目指す仕組みとなっており、手軽に遊びながらプログラミングのロジックを学ぶことができます。
このツールを活用した小学校低学年向けの授業をどのように展開していくのか、実際に子どもたちに授業を教えていただくメンターの皆様とともに検討し、実証を行いました。

事業の実施体制は、次に示す通りです。

実証主体

  • 江崎グリコ株式会社(本事業受託事業者)
  • グーグル合同会社
  • 株式会社電通
実証校
  • 小金井市立前原小学校

1.2.1 GLICODE(グリコード)について

GLICODEは、お菓子をルールに従って並べることで、遊びながらプログラミングの基礎的な考え方を学ぶことができるアプリケーションです。画像認識技術でお菓子をプログラミングの「命令」に変換することで、子供が大好きなお菓子でプログラミングを学ぶことができます。また、グリコのキャラクターである「ハグハグ」をプログラムでゴールまで導くというゲームの形式を用いており、遊びながら学習効果を得られることを狙っています。


GLICODEアプリ画面

(1)体験の手順

準備物として、スマートフォンやタブレットなどのカメラ付きデバイス、グリコのお菓子とキッチンペーパーが必要になり、プログラムの実行には以下の手順で行います。

  1. キッチンペーパーなどを敷いた清潔な台の上にお菓子を並べる
  2. デバイスのカメラで並べたお菓子を読み取り、命令に変換する
  3. 変換された命令を実行し、ハグハグをゴールに導く


体験の手順

(2)おかしのルール

GLICODEではグリコの商品である「ビスコ」「ポッキー」「アーモンドピーク」「アソビグリコ」の4つのお菓子をプログラミングの命令に変換しています。アプリの前半は「チュートリアルコース」となっており、それぞれのお菓子でプログラミングの4つの考え方を学べるように設計されています。具体的には、ビスコで「SEQUENCE(順番に実行)」、ポッキーで「LOOP(繰り返し)」、アーモンドピークで「IF(場合分け)」、アソビグリコで「RANDOM(ランダム)」という対応関係でプログラミングの考え方を学べるようになっています。


4つのお菓子と命令の対

ビスコの命令
ビスコは「ジャンプ」の命令に対応しており、ハグハグを向いている方向にジャンプをさせます。縦向きに置いたビスコは「のぼる」という命令に変換され、目の前の一段高い段差に登ることが出来ます。横向きに置いたビスコは「とびこえる」という命令に変換され、目の前の穴や池を飛び越えることができます。


ビスコの命令

ポッキーの命令
ポッキーは「移動」と「繰り返し」の命令に対応しています。「移動」の命令は、ポッキーを上下左右の向きに置くことで変換されます。ポッキーが向いている方向がハグハグを移動させる命令に変換され、例えば、チョコレート部分が右を向いているポッキーは「みぎにうごく」という命令に変換されます。「繰り返し」の命令は、ポッキーを斜めのハの字に置くことで変換されます。ハの字にしたポッキーで他のお菓子を挟むことで、挟まれた命令を複数回繰り返す「ループ命令」に変換されます。ループの回数は、ハの字の左側のポッキーを複数本重ねることで指定することができます。


ポッキーの命令

アーモンドピークの命令
アーモンドピークは「変身」の命令に対応しており、ハグハグのサイズを大きくしたり小さくしたりします。縦向きに置いたアーモンドピークは「大きくなる」という命令に変換され、大きくなったハグハグは進路を塞ぐ「岩」を破壊して進むことができます。横向きに置いたアーモンドピークは「小さくなる」という命令に変換され、小さくなったハグハグは進路を塞ぐ「土管」の中を通り抜けて進むことができます。


アーモンドピークの命令

アソビグリコの命令
アソビグリコは「ランダム」の命令に対応しています。「ランダム」の命令は、ハグハグがその場で「バク宙」や「スピン」、「帽子に入る」などのランダムな動きをします。ステージのクリアには必ずしも必要ではないですが、隠れたお楽しみの要素になっています。


アソビグリコの命令

(3)ステージ構成

GLICODEでは前半の「チュートリアルコース」(22コース)と後半の「応用コース」(18コース)に別れており、前半の「チュートリアルコース」ではそれぞれのお菓子でプログラミングの基本的な考え方を学べるようになっています。


GLICODEのステージ構成。左側がチュートリアル、右側が応用コースとなっている。

ビスコのステージではプログラミングを順番に実行する「順次実行」を学ぶことができます。ポッキーのステージでは、プログラミングの指定された箇所をループする「繰り返し処理」を学ぶことができます。アーモンドピークのステージでは、条件によって処理を分岐する「条件分岐」を学ぶことができます。条件分岐では、ゲーム画面に表示される「Aボタン」と「Bボタン」に命令をセットすることで、「ボタンが押されたら、そのボタンにセットされている命令を実行する」という形で条件分岐の機能を実現しています。


アーモンドピークで条件分岐を学ぶ仕組み

GLICODEでは以上の仕組みで、グリコのお菓子をプログラミングの命令に変換することでプログラミングの基本的な考え方の学習を可能にしています。

(4)体験の際の注意点

GLICODEは食品を使った体験であるため、児童のアレルギー対応や衛生面に注意を払いつつの実施が求められます。GLICODEでは、児童のアレルギーへの対応のためにお菓子とアレルギー物質の対応表を作成しています。実施の際には、この表を参考にしつつ、児童がアレルギーを持つ食品に触れることのないように注意を払う必要があります。また、衛生面に配慮するために、体験前に子供が手洗いをするように指導した上で、タブレットの表面をウェットティッシュ等で清潔にしておき、実施場所には消毒用アルコールを設置するなど、対応していきます。


ティーチャーズマニュアルに記載されているアレルギー成分表

2.モデルの内容

2.1 メンターの募集・研修について

2.1.1 メンター募集期間

8月、10月にかけて、2回に分けて募集を行いました。

2.1.2 メンター募集方法

実証校である小金井市立前原小学校の松田校長先生にご協力いただき、小学校低学年の担任の先生、PTAの保護者の皆様にお声掛けいただき、募集を行いました。

2.1.3 メンター募集対象(メンター種別)

  1. 小学校低学年の担任の先生
  2. PTAの保護者の皆様
  3. e-ネットキャラバン講師の皆様

2.1.4 メンター種別の選択理由

今回、GLICODEは2016年8月に新規開発したプログラミング学習アプリになります。そこで、どのように授業展開を行っていくかも確立されているツールではありません。そこで、このアプリを活用した新しい学習スキームを構築していくためには、授業を日常的に行っているプロの視点が必要だと考え、【①小学校低学年の担任の先生】にお声掛けをさせていただきました。
また、GLICODEを活用した授業やワークショップを本事業以外にも複数回展開していく中で、現時点では「子どもたちへのきめ細かいサポートが必要なツール」であることに気づきました。そこで、家庭であれば、子ども1人に対して、親御さんが教えることができると考え、【②PTAの保護者の皆様】にお願いをすることにしました。

2.1.5 メンター募集に関する工夫

メンターの皆様を集めていくためには、まず、教育現場において、GLICODEの良さや仕組みに理解・共感をしていただく必要がありました。
そこで、アプリの開発段階から松田校長先生に触れていただき、教育する側の観点で様々なアドバイスをいただきました。
また、その魅力をわかりやすく伝えていくためのツール(WEBサイトや紹介映像)を制作しました。


GLICODE WEBサイト

2.1.6 メンター研修期間

メンター研修は、3回に分けて実施しました。

  1. 8/30(火) 小金井市立小・中学校プログラミング教育研修会におけるグリコード体験会
  2. 9/27(火) 前原小学校メンター育成授業 <低学年の担任の先生向け>
  3. 11/10(木) 前原小学校メンター育成授業 

2.1.7 メンター研修方法
1.小金井市立小・中学校プログラミング教育研修会におけるグリコード体験会

日時 2016年8月30日(火)14:30~15:30
対象者 東京都小金井市立前原小学校 低学年の担任先生
参加人数 6人
講師 GLICODE開発スタッフ

<体験会の流れ>

  1. GLICODE概要説明(10分)
  2. ルール説明をしながら問題を解く(40分)
    休憩(10分)
  3. 応用問題演習(40分)
  4. アンケート記入、質疑応答(10分)

初回のメンター育成授業では、GLICODEの開発メンバーが講師役となり、前半は説明、後半は体験会というスタイルで開催しました。各机にキッチンペーパーを貼り付け、おかしとタブレットPCを用意し、体験できる準備をしてから、授業を始めました。
まず、「GLICODEで学べるプログラミングの考え方」「学び方の手順」「お菓子のアレルギー物質の説明」等GLICODEに関する説明を一通り行いました。その後、「ポッキー」のコードルールを説明し、各先生方にそれぞれのペースで問題を解いていただき、時間を区切りながら、「ビスコ」「アーモンドピーク」「複合ステージ」の問題にチャレンジしていただきました。
実際に授業を行ってみて感じたのは、各先生方でも問題を解くスピードがバラバラであることです。無理に足並みをそろえようとして、早く解き終わってしまった先生を待たせてしまう場面がありました。


  • GLICODEのお菓子のルールを説明

  • テーブルの上には、キッチンペーパーを敷き、衛生的な環境で実施

2.前原小学校メンター育成授業 <低学年の担任の先生向け>

日時 2016年9月27日(火)14:30~15:30
対象者 東京都小金井市立前原小学校 低学年の担任先生、PTAの皆様、e-ネットキャラバン講師の皆様
参加人数 10人
講師 東京都小金井市立前原小学校 松田校長先生、GLICODE開発スタッフ

<体験会の流れ>

  1. 初等教育におけるプログラミングカリキュラムの導入と現状の説明(10分)
  2. 近くの人と教え合いながらどんどん問題を解く(50分)

2回目のメンター育成授業では、ルール説明は最初にまとめて行った後、各ステージをどんどん解いていただきました。今回は、「子どもたちに教えること」を意識した授業展開を行い、「タブレットPCの電源の位置や音量調整方法を教えた方がいいですね」「お菓子は授業中には食べず、自宅に持って帰るように最初に言った方がいいですね」「ルール説明は最初に行って、あとは自由に各生徒のペースで解いて行った方がいいですね」など、子どもたちに教える際の注意点や気付いたことを確認し合いながら進めていきました。前回の体験会に参加されている先生方がメンターということで、初体験の方に対して、教え合う姿が見受けられ、どのような授業展開を行っていくかのイメージを掴む場となりました。


  • プログラミング教育の現状の説明

  • 実際に各ステージを解いていただきます


  • おかしをならべてタブレットで読み取ります

  • 読み取った命令を実行中


  • メモを取りながら、授業展開を考えていきます

  • ディスカッションをしながら、教え方を考えていました

3.前原小学校メンター育成授業 

日時 2016年11月10日(木)13:30-15:00
対象者 PTAの保護者の皆様
参加人数 7人
講師 東京都小金井市立前原小学校 松田校長先生、GLICODE開発スタッフ

<体験会の流れ>

  1. 初等教育におけるプログラミングカリキュラムの導入と現状の説明(10分)
  2. 「GLICODE」概要説明(10分)
  3. 11月26日実施の親子体験会でのPTA役員の役割についての説明(5分)
  4. 「GLICODE」操作説明(グリコ、ビスコ、アーモンドピーク)(5分)
  5. 体験実施(50分)
  6. 授業の流れの確認(10分)

3回目のメンター育成授業は、普段授業を行っていないPTAの保護者の皆様を対象に行いました。まず、初等教育におけるプログラミング教育の現状を説明した後、タブレットの扱い方、お菓子の扱い方、衛生面・アレルギー面の配慮等、子どもたちへの注意点を確認した後、体験に入っていきました。GLICODEを既にご家族で体験されている方もおり、隣に座っている同士で教え合う姿も見受けられました。その後、授業の流れやポイント、役割確認などを行いました。
保護者の間でも「プログラミングを子どもに教えるのは難しい」という認識があるようでしたが、お菓子をきっかけに遊び感覚でプログラミングに触れるきっかけになるのが良い、という感想もいただきました。その一方で、実際にアプリに触れてみて、大人でも考えるのに時間を要する問題があり、小学校低学年の子どものみでクリアしていくのは難しいのかもしれないという意見も出ました。


  • 初等教育におけるプログラミングの現状説明

  • 実際にGLICODEに挑戦


  • ペアで教え合いながら進めていきます

  • お菓子の並べ方を考え中

2.1.8 メンター研修に関する工夫

お菓子をプログラミングに使うということで、授業展開を行っていく上での不安が出てくることを予想していました。そこで、事前に、懸念事項、リスクの洗い出しを行い、最初に丁寧に伝えていくことにより、不安解消を行えるようにしました。

1つ目は、衛生面です。まず、お菓子をテーブルに直置きすることがないように、キッチンペーパーをテーブル全体に貼り付けました。また、入り口には消毒液、テーブルにはキッチンペーパーを配置し、清潔にお菓子を触れる環境を用意して、メンター研修を行いました。
2つ目は、食品アレルギー問題です。これも、事前にアレルギー成分表を配布し、子どもたちと保護者の皆様への周知を事前に行いました。
3つ目は、授業で使用できるサポートツールを作成しました。メンターの皆様が極力負担なく授業ができるよう、説明用スライドや配布物等も用意し、授業イメージを持ってもらえるように準備を行いました。

2.1.9 他地域にも再現可能なノウハウ

他地域でも授業が展開できるよう、メンター育成を通じて、サポートツールを取り揃えました。

ティーチャーズマニュアル
GLICODEの概要、学習のポイント等の解説がまとめられており、これを読んでいただくことにより、授業展開がスムーズに行うことができる先生用のマニュアルを作成しました。GLICODEのWEBサイトに掲載しており、どなたでも自由に活用できるよう整備を行いました。

ティーチャーズマニュアル(全58ページでGLICODEの教え方のポイントを解説)

授業用スライド&配布物
授業でそのまま使用できるスライドと配布物を用意しました。これを活用していただくことにより、授業の準備の手間と負担を軽減させることができ、授業展開へのハードルを下げることが可能になります。


  • 授業用スライド

  • 配布資料

2.2 児童生徒の募集・学習について

2.2.1 児童生徒の募集期間

10月、11月の2回に分けて、約2週間で募集を行いました。

2.2.2 児童生徒の募集方法

実証校である小金井市立前原小学校の松田校長先生にご協力いただき、保護者の皆様宛に案内状を配布しました。参加希望者には、参加票を提出していただきました。

2.2.3 児童生徒の対象学年

小学校低学年(1~3年生)

2.2.4 対象学年の選択理由

GLICODEは、「順次実行」「ループ(繰り返し)」「場合分け」「ランダム」というプログラミングの基本の考え方を体験できるようになっており、導入のためのツールと位置付けています。プログラミングの初等教育に相応しいのではと考え、小学校低学年を対象学年としました。

2.2.5 児童生徒募集に関する工夫

案内状とともに体験会で扱うお菓子のアレルギー成分表も添付し、事前に内容を確認し、同意いただいた上で参加していただけるよう募集案内を出しました。また、特に2回目は親子体験会ということで、児童、保護者を合わせた参加者数が多くなることが予想されたため、2部制で受けられる体制を作った上で、募集をかけました。

2.2.6 児童生徒の学習期間

児童への授業は、下記の2回に分けて実施しました。

   

  1. 10/17(月) GLICODE放課後体験会 <3クラス>
  2. 11/26(土) GLICODE親子体験会 <8クラス>

2.2.7 児童生徒の学習内容
1.GLICODE放課後体験会

日時 2016年10月17日(月)15:30~16:15
対象者 東京都小金井市立前原小学校 低学年(1~2年生)希望者
参加人数 79人
講師 東京都小金井市立前原小学校 低学年担当教諭、GLICODE開発スタッフ(サポートスタッフ)

<体験会の流れ>

  1. 先生からの諸注意
  2. アプリの使い方説明(ポッキーのステージで実演)
  3. 体験(ポッキー、ビスコ、アーモンドピークを順次実施)

1回目の児童への体験会は、3クラスに分かれて行われました。冒頭では、「おかしは授業中に食べずに、持って帰るように」という共通ルールを伝えて授業が始めました。授業を行っていただく上で大切にしていたことは、勉強と構えずに、プログラミングを楽しんでもらうことです。そのため、授業内でも、「順次実行」「ループ」などのプログラミングのルールは特に意識させずに、体験を中心にしながら、無意識にプログラミングの考え方を体感してもらう、ということをテーマに実施していただきました。
おかしの並べ方のルールを説明した後、各自で各ステージをどんどん解答していっていただく演習形式で行いました。個人個人の演習ではありましたが、友達と教え合うなどの姿が見られ、実際、進み具合も個人によって差が見られ、ルールや扱い方を理解した児童はどんどんステージを進めることができましたが、理解が追いつかない、タブレットの操作方法に不慣れな児童には、サポートスタッフが頻繁にフォローすることが必要でした。
全体としては、多くの児童がゲーム感覚で楽しんでいる印象がありましたが、おかしの読み取り精度やタブレットの扱い方には課題が残りました。


  • 教室に入る前に、手の消毒をしてもらいました

  • GLICODEを学ぶ上での諸注意を説明


  • ポッキーのコードのルールを説明しています

  • グリコードがどんなプログラミングなのかを説明しています


  • 先生と一緒にGLICODEにチャレンジ

  • ステージを見ながら、おかしを並べていきます


  • お菓子を読み取るときには立たないと難しいようです

  • 友達同士で教え合って学習する姿が見られました

2.GLICODE親子体験会

日時 2016年11月26日(土)13:30〜14:30 15:30〜16:30 (2部制)
対象者 東京都小金井市立前原小学校 低学年(1~3年生)の児童と保護者(希望者)
参加人数 児童 116人 保護者同伴者含む 252人
講師 東京都小金井市立前原小学校 PTAの保護者の皆様、GLICODE開発スタッフ(サポートスタッフ)

<体験会の流れ>

  1. GLICODE体験前の諸注意
  2. アプリの使い方説明(ステージで実演)
  3. 体験(ポッキー、ビスコ、アーモンドピークを順次実施)

2回目は、児童と保護者が一緒に参加できる親子体験会という形で実施しました。当初の想定を上回る参加者希望があり、4クラス×2部制の開催となりました。
事前に冒頭で参加者に伝えておくポイントと授業の簡単な流れとマニュアルを作っていたこともあり、メンターの皆様もスムーズに体験会の進行を行うことができおり、子どもの自主性を重視して各自のペースで演習を行っていきました。
今回は、各家庭内でわからないところがあればフォローをすることができたため、サポートスタッフの稼働も少なく、児童間の進み具合の差も前回と比べて少なかったと思います。また、前回参加している児童もおり、応用ステージにチャレンジしている子も見られました。
最後は、使ったお菓子は持ち帰っていただくと共に、各家庭での自宅学習を促して体験会を終了しました。


  • お菓子の読み取り方法を実演しています

  • アプリの使い方を画面に映し出しながら説明しています


  • 1クラス約13~15組のご家族に参加していただきました

  • 保護者の皆様がサポートしている姿も


  • 一緒になってお菓子の並べ方を考えていきます

  • お菓子のルールを忘れてしまったらルールを再確認


  • お菓子を読み込んだらプログラムを実行!

  • タブレットの位置を高くしないとお菓子が読み取れない場面も

2.2.8 児童生徒への講座に関する工夫

GLICODEの醍醐味は何と言ってもお菓子を使ってプログラミングが学べるという、学びの入り口がとても楽しく感じられるところだと思います。プログラミングは難しいものではなく、楽しいものだと感じてもらえるように、「教えすぎない」ことを意識しました。授業だからといって手取り足取り教えるのではなく、児童の自主性に任せて学習できる進行を心がけました。最低限のルールだけを最初に教えて、あとはトライ&エラーを繰り返しながら、正解を見つけられるような進め方をすることにより、理解が早い児童はどんどん次のステージへと進んでいき、周りでわからない児童がいればお互い教え合うことができるようになりました。

2.2.9 他地域にも再現可能なノウハウ

セッティングと学習環境
実際のお菓子で授業を実施する際には、机にキッチンペーパーを貼り付ける作業が発生します。養生テープで仮止めするだけではありますが、所要時間として30分~1時間程度準備の時間を見ておいた方がよいと感じました。
また、生徒1人につき、学校の机2つ分が利用できると、余裕を持って体験することができます。お菓子の箱と実際に並べるお菓子、タブレットPC等あるため、物を置くスペースと、お菓子を並べるスペースの確保が必要にあります。

授業展開とスタッフ人員
現状のGLICODEの授業展開において、先生1人に対して、生徒の人数が増えると、全ての生徒のフォローが難しくなるため、先生以外にサポートスタッフが必要になってきます。
しかし、親子体験会という形にすることにより、サポートスタッフの役割を保護者の方にお願いできるため、少ない人員で授業展開が可能になります。


  • 机にキッチンペーパーを貼り付ける作業

  • 左側の机にお菓子の箱、右側のお菓子を並べるエリア

3. モデルの訴求ポイント

3.1 モデルのねらい・意義

小学校低学年のプログラミング教育において、PC上の操作のみで学ぶツールはありますが、目の前に具体的な物を用意してより直感的に学ぶことができるツールは、世の中にまだまだ少ないという背景から、子どもの大好きなおかしを使ったプログラミングアプリケーション『GLICODE(グリコード)』を開発しました。
今回、プログラムの基礎的な考え方を学ぶためのツールとして、新規で開発を行ったものであるため、

  1. 子どもが楽しんで取り組める教材になっているか、適切なレベル設定、学びが得られるものになっているか。
  2. メンター育成を通じて、プログラミング授業で扱う教材して教えやすいものとなっているか。
という切り口から検証を行っていくという狙いで実証を行いました。

3.2 モデル実施により得られた成果

3.2.1 受講した児童生徒の変化

第1回目の体験会に参加した児童のうち、学童に戻る児童11人に感想をヒアリングしたところ、下の図のような感想が得られました。
生徒は、45~60分の体験会において、集中してもくもくとGLICODEに取り組んでおり、「楽しかった」という声を多く聞くことができました。とにかく児童たちに楽しいと感じてもらうことが1つの目標であったので、それは達成できたのでは、と感じています。
その一方で、アプリ側のお菓子の読み取り精度には課題があり、「お菓子を読み込むラインが表示されなかった」「命令がちゃんと表示されない」などの操作方法の部分で、学習が止まってしまう場面も見られた。


カメラで読み込むと、お菓子の上にラインや枠が表示されます

第1回体験会の感想(n=11)
  • 楽しかった・もっとやりたい
  • ハグハグが動くことができた
  • 楽しかったが難しかった・よくわからなかった
3.2.2 担当したメンターの変化

当初は、アレルギー問題と衛生面的な部分で懸念がありましたが、実際に授業を行っていた中で、

  1. 子どもたちが楽しそうにやっていたのでよかった
  2. 意欲的に学んでいる姿が見られた
  3. 教員の立場では食べ物で学ぶというのは難しいと思う反面、題材としては身近でおもしろい
  4. 子どもたち同士で教え合っており、1人で解決できない課題も協力すると解決できることということを実践していたのがよかった
  5. プログラミングの授業の経験がなかったが、自分でも教えることができた
など前向きな意見をいただくことができました。

メンターに対するアンケート
8/30(火)に行われた小金井市立小・中学校プログラミング教育研修会で、 グリコードを体験したメンターに対するアンケートを実施し、6名のメンターから回答を得ることができました。

Q1:小学校で担当されている学年を教えて下さい(n=6)
  • 1年生
  • 2年生
  • 特別支援学級

今回体験授業に参加したメンターの方々は、特別支援学級で普段教えていらっしゃる方が多く、特別支援学級では、1年生から6年生まで、全ての学年の生徒を指導していらっしゃるとのことでした。

Q2:ご自身のプログラミング経験を教えて下さい。(n=6)
  • 今回初めて
  • 1年未満
  • 1年〜3年未満
Q3:プログラミングの指導経験はありますか?(n=6)
  • はい
  • いいえ

参加したメンターは、一人を除いて全員が、プログラミングを体験することも指導することも初めてでした。実際の教育現場も同様の状況であると考えられます。

Q4:GLICODEの難易度はどのように感じましたか?(n=6)
  • 難しかった
  • 適切だった
  • 簡単だった

グリコードの難易度については、全員から「適切だった」あるいは「簡単だった」との回答を得ることができました。一方、自由記述欄には「一部、難しい部分もある」との声もありました。

Q5:GLICODEは小学校低学年向けの教育ツールとして適切であると感じましたか?(n=6)
  • はい
  • どちらとも言えない
  • いいえ

こちらは、6人中4人が「どちらとも言えない」との回答でした。メンターにとっても、実際に授業で教えて見るまでわからないようでした。小学校低学年よりも、中学年に向いているのではないか、との意見も上がりました。

3.2.3 保護者の反応

2016年11月26日(土)に前原小学校にて実施した親子体験会で、体験後に保護者に対するアンケートを実施しました。結果、44名の保護者からアンケートを回収することができました。

各アンケート項目の集計と分析

Q1:お子様の学年を教えて下さい。(n=44)
  • 1年生
  • 2年生
  • 3年生

参加した児童の学年別の人数は、1年生、2年生、3年生がほぼ同数でした。低学年でも理解できるようにアプリの設計をしていたため、1年生でもスムーズに学習を進めることができていました。

Q2. 2020年「プログラミング教育必修化」に向け、ご家庭でのプログラミング学習についてどのようにお考えでしょうか?(n=44)
  • 自信がある
  • やや自信がある
  • どちらでもない
  • やや不安である
  • 不安である

アンケートに協力してくださった保護者の3割ほどは、家庭でのプログラミング学習に自信があるという回答をしていました。これは、前原小学校で継続的にプログラミング学習に関するイベントや体験会をおこなっていることが理由であると考えられます。一方で、プログラミング学習に対して不安を感じている保護者も、3割ほど見受けられました。

Q3. お子様は、グリコードを体験されてどのような感想をお持ちでしたか?(n=44)
  • 楽しかった
  • やや楽しかった
  • どちらでもない
  • ややつまらなかった
  • つまらなかった

体験授業に参加した児童のほとんどが「楽しかった」、「やや楽しかった」という感想を持っていました。グリコードのお菓子を使って、遊びながら学習できるというコンセプトがうまく機能した結果であると考えられます。

Q4. お子様にとって、グリコードの難易度はどうでしたか?(n=44)
  • 難しかった
  • やや難しかった
  • ちょうど良い
  • やや簡単だった
  • 簡単だった

体験会に参加した児童の過半数は、グリコードの難易度に関して問題なく学習を進めることができていました。小学校の低学年をターゲットに、分かり易いチュートリアルを表示したことが、機能したと考えられます。一方、4割ほどの児童はグリコードの学習を「難しい」と感じていました。ヒアリングを行ったところ、プログラミングのルールの理解というよりは、写真を撮り、コードに変換し、キャラクターを動かすというゲームの進め方そのものの理解が難しい例が多く見受けられました。この点は、次回アップデートの際の課題として改善する予定です。

Q5. グリコードは、プログラミング学習に役立つと思いましたか?(n=44)
  • そう思う
  • ややそう思う
  • どちらでもない
  • やや思わない
  • 思わない

約75%の保護者から、グリコードはプログラミング学習に役立つとの回答を得ることができました。実際に隣で子供が楽しみながら学習する様子を見る中で、グリコードがプログラミング学習に役立つとの実感を持ってもらえたようです。

Q6. 親子体験会後、ご家庭でもグリコードを試してみましたか?(n=44)
  • はい
  • いいえ

学習できる仕組みと、簡単なステージだけでなく親子で考えないとクリアできない難しいステージを織り交ぜた「やり込み要素」が機能していたようです。実際にヒアリングしたところ、「親子で遊べるステージがあって嬉しい」との声が上がりました。また、体験会への参加自体も2回目以降である「リピーター層」のご家庭も少数ですが確認されました。
この他、アンケートの自由記述欄では「お菓子を用いることで楽しく学習でき、良かった」という意見が目立った一方で、「世代的に食べ物を使うことに抵抗がある」と言ったお菓子を使うことに対するネガティブな意見も一部見られました。

3.2.4 教員、教育委員会の反応

実際に授業をした教員からは、お菓子を用いることでプログラミングの世界の概念と、実世界のお菓子の量を感覚的に結びつけて考えることができるという点が喜ばれました。算数の教育ではこのような機能では「算数セット」によって実現されていますが、プログラミングの教育では「算数セット」に当たるものがまだ普及していないため、プログラミングの感覚的な理解にGLICODEが役立つという意見がありました。

3.2.5 協力大学、団体等の反応

本モデルでは、前原小学校での授業の実施以外に、一般社団法人みんなのコードが主催するHour of Codeというプログラミング学習イベントでの授業の実施も行いました。Hour of Codeでの授業の実施も好評で、子供が興味を持てる「お菓子」を用いて楽しみながら学ぶことができる点が喜ばれていました。

4.モデルの改善点

4.1 実施にあたって直面した困難

授業実施に向けて、お菓子でプログラミングを学ぶというGLICODEに対する理解を得ることとともに、その準備作業が当初の想定よりも大変な部分が多かったです。
まず、「お菓子を授業に使う」ということに対して、お菓子を何度も手で触ることへの衛生面における懸念や、食品アレルギーがある生徒への配慮等、予想はしていたものの大きな問題となりました。衛生面に関しては、消毒アルコールやウィットティッシュの設置、授業前には、全ての机にキッチンペーパーを貼り付ける作業を行うことでクリアしていったものの、毎回授業前の教室のセッティングには数時間を要しました。アレルギー問題に関しては、先生方と保護者の皆様のご理解もあり、アレルギー成分表の事前確認の上、希望制で参加者を募るという進め方で本物のお菓子を使って授業を実施することができました。
そして、初回の授業の前に、GLICODEのアプリを約80台規模で全てのタブレット端末にインストールを行うのにも、時間を要しました。インストールにはモバイルWiFiを持ち込んで作業する必要があり、最初の導入作業事の負荷が、今後横展開していく際にも発生することがわかりました。
授業実施中は、概ねスムーズに進行をすることができましたが、環境光が変化することにより、一時的に画像認識が安定して動作しない場面が見受けられました。具体的には夕方、窓から強い西日が差し込むことにより、お菓子の色合いや影の形が変化した時に、一時的に画像認識が安定して動作しないことがありました。今後の実施にあたってはこのような環境光の変化に対応できるように、画像認識の制度向上が望まれます。

4.2 実施を通して把握した反省点

まず、学校側とのご相談の過程で食品アレルギーの問題が発生したことや、学校行事の日程を把握しきれていなかったことにより、放課後にも関わらず先生方にはかなりのご負担をかけてしまったことは反省点として挙げられます。実際の教育現場に入っていく際には、現場の状況をしっかりと把握した上で、進行していく必要があります。
また、GLICODEのアプリの中で、お菓子を用いたコーディングのルールを理解できるようにアプリ内でのチュートリアルを表示させていましたが、お菓子を用いたコーディングのルール以前に、お菓子の写真を撮り、コードに変換し、アプリ画面でキャラクターを歩かせるという基本的な学び方の流れを理解するのに苦労している児童が見受けられました。そのため、コーディングのルールを説明するチュートリアルに加えて、アプリの流れ自体を解説するチュートリアルも追加する必要があると感じました。この反省点は、来年度のアプリの更新に向けて改善中です。

4.3 モデル普及に向けた改善案

学校への導入時には、学校側の状況を正確に把握する配慮が大切であると考えています。今回、特に課題となったアレルギーと衛生面の問題に対する対応としては、お菓子のモックを制作することにより、クリアしていきたいと考えています。
また、運営マニュアルをテンプレート化し、どこの学校でも簡単に授業が展開できるよう、授業実施のポイントをまとめたノウハウ資料もまとめていくことが大切になると思います。
さらに、アプリのアップデートに向けた改善を進めています。チュートリアルに関する改善では、今まで表示していたお菓子を用いたプログラミングのルールに加え、ゲームの流れ自体を丁寧に理解させるチュートリアルを追加する予定です。
また、西日などの環境光の変化で認識が不安定になる場面が見受けられたため、より安定したお菓子の認識を実現するために画像認識の手法を改善する予定です。具体的には、より安定して動作をする「機械学習」を用いた手法への切り替えを検討しています。

5.モデル実施のコスト

5.1 実施コスト内訳

5.2 児童ひとりあたりのコスト

総コスト5,000,000円/ 児童生徒ののべ人数 195名 = 25,641円/名

6.モデルの将来計画

●お菓子のモック制作とUI/読み取り精度改善
実際の小学校の授業の中で本物のお菓子を導入することは、特に食品アレルギーの面において、非常に大きなハードルであることが今回の実証でわかりました。そこで、どこの学校でもアレルギーを気にせずに、GLICODEを学ぶことができるお菓子のモックを制作し、授業の中ではモックを使用し、家庭では本物のお菓子で学んでいただけるようなスキームを構築していきたいと考えています。
また、UIの改善に関しては、実証を通じて児童が引っかかっているポイントをウォッチし、下記のようなリストに改善点の洗い出しを行いました。これらの改善ポイントの中から、「途中でコードのルールがわからなくなる」といった優先順位が高いものから改修していき、より使いやすいツールにしていきたいと考えています。


UI改修ポイント洗い出しリスト化

さらに、お菓子の読み取り精度の問題で、学習が妨げられることがないよう、精度向上にも着手しています。
機械学習を取り入れ、お菓子の影の影響や環境に依存せず、快適に読み取れるように、調整を行っていきたいと考えています。


アソビグリコ(キャラメル)が認識しない

他地域への展開
GLICODEの普及活動を継続して行っていきたいと考えています。まず、国内については、地域は未定ですが、前述のモックを利用した授業展開を小学校で実施していくことを目指していくと同時に、塾などの教育関連企業や団体との連携も積極的に行っていくことを考えています。
また、家庭における認知を高めていくことを視野に入れ、お菓子のパッケージにGLICODEの告知を入れる等も検討していき、より多くの家庭での学習の機会を増やしていくことも目指しています。
さらに、現在GLICODEの英語版アプリも制作しており、日本発のプログラミングツールとして海外にも発信していければと考えています。その先駆けとして、3月に米国オースティンで開催されるEdTechの祭典SXSWeduにて英語版のプロトタイプを発表し、海外への普及活動にも取り組んでいく予定となっています。

7.参考資料【添付資料一覧】

家庭へのお知らせ案内

アンケート結果

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