若年層に対する
プログラミング教育の普及推進報告2017

HOME > 大阪府

ものづくりDNA の継承をめざした、
地域完結型プログラミング教育モデル

⻄⽇本電信電話株式会社(NTT⻄⽇本)・キャスタリア株式会社

H28年度当初予算にて実証実施

1.モデルの概要

1.1 モデル名称

ものづくりDNA の継承をめざした、地域完結型プログラミング教育モデル

1.2 モデルの全体概要

全体概要

  • 実証フィールドである大阪府寝屋川市内を中⼼とした近隣エリア在学の学⽣等をメンターとして募集・育成。小型ロボット「Ozobot」(通称:たこ焼き型ロボット)を活用した小学生向けプログラミング講座を実施し、自分で組んだプログラムによって実際の“もの”が動く体験から、大阪の「ものづくりDNA」を継承する人材育成のきっかけを導く(図1-1)。
  • これまでに寝屋川市教育委員会にて整備(⻄⽇本電信電話株式会社(以下、「NTT ⻄⽇本」)が環境構築した学校内のICT 環境(Wi-Fi 環境、タブレット端末、PC 端末、電⼦⿊板機能付きプロジェクター等)を有効活用する講座を企画・実施(図1-2)
  • 本プロジェクトで実証したノウハウを活かし、NTT ⻄⽇本及びキャスタリア株式会社(以下、「キャスタリア」)が地域の大学、自治体(教育委員会)、小学校等のハブとなり、「地域完結型プログラミング教育モデル」の普及を推進する(図1-3)。

メンター総数

育成したメンターの総数:15 名(寝屋川市内及び近隣エリア在学の学⽣等)

<寝屋川市内の大学>

  • 大阪電気通信大学
  • 摂南大学
  • ⼤阪府⽴⼤学⼯業⾼等専門学校

<近隣地域の⼤学>

  • 大阪教育大学大学院
  • 同志社大学大学院
  • ⽴命館⼤学
  • 大阪芸術大学
  • 関⻄外国語⼤学
  • 岡山大学大学院 等
受講児童総数

講座受講児童の総数:62 名(寝屋川市⽴石津小学校5 年⽣2 クラスの全児童が受講)

2.モデルの内容

2.1 メンターの募集・研修について

2.1.1 メンター募集期間

2016 年8 ⽉上旬〜9 月中旬

2.1.2 メンター募集方法

寝屋川市が包括連携協定を締結している大阪電気通信大学、摂南⼤学、⼤阪府⽴⼤学⼯業⾼等専門学校、及び、NTT ⻄⽇本が法人営業活動等でつながりのある大学を中心にメンター募集を⾏った。

2.1.3 メンター募集対象(メンター種別)

寝屋川市内を中⼼とした近隣エリア在学中の大学生、高専生を主な募集対象とした。

2.1.4 メンター種別の選択理由
  • 他地域にも普及展開できるメンター育成モデルを実証するために、どの都道府県にも必ず複数存在する高等教育機関(大学、高等専門学校等)からの⼈材確保を⾏うこととした。
  • 受講対象児童(小学校5年⽣)にとって、家族でも親戚でも先生でもない「地域の現役の学生」がメンターとなり
    指導することで、⼦ども達が⾃分の進路について⾝近に考えるためのきっかけづくりとなることもねらった。
2.1.5 メンター募集に関する工夫
  • 多様な得意分野を持つメンターを集めるために、メンター募集チラシに「プログラミング未経験者OK」のメッセージを記載するとともに、工学系・情報系学部の在学生だけではなく、教育系学部の在学生や教員免許取得者(または取得希望者)、教員志望の学生、その他幅広い志向を持つ学生にリーチするようチラシ配布を⾏った(図2-1)。
  • 申込があった学生に対しては、寝屋川市教育委員会とNTT ⻄⽇本にて面談(対面または電話)を実施し、本
    ⼈の志望動機と⼈物像の確認を⾏うことで、⼩学⽣向けメンターとしての適性を確認した(図2-2)。
  • プログラミング経験や情報系の教育実習経験等の専門性を持つ学生にメンターの中心的存在となってもらうことを
    ねらい、特定の研究室の教授に直接アプローチを⾏い、協⼒依頼を⾏った。

2.1.6 メンター研修期間

プログラミング講座開始前

  • 集合研修:2016 年9 月下旬〜10 月下旬の期間に全4 回(2〜3 時間/回)
  • 予習復習は集合研修期間中にオンライン学習にて実施

プログラミング講座開始後

  • 講座実施前の準備会:全5 回(2〜3時間/回)
  • 講座実施後の振り返り会:全5 回(2〜3時間/回)
2.1.7 メンター研修方法

メンター育成講師等

本プロジェクトにおけるメンター育成講師は、ECC コンピュータ専門学校及びキャスタリアの吉田研一氏が務め、メン
ター育成講師及びプログラミング講座のカリキュラム・教材監修は、上越教育大学准教授の大森康正氏が務めた
(表2-1)。

表2-1 メンター育成講師の略歴
メンター育成講師 メンター育成講師/カリキュラム・教材監修

ECC コンピュータ専門学校/キャスタリア株式会社
吉田 研一

【略歴】
日本アイ・ビー・エム株式会社等を経て、現在、ECC コンピュータ専門学校の講師兼キャスタリア株式会社エバンジェリスト。C言語、VisualBasic、PHP、SQL、Java、Python、 Swift、JavaScript などプログラミング言語の実習授業を担当するとともに、子どもプログラミングスクール「8×9(はっく)」の講師も務める。
「プログラミング教育研究会」の⽴ち上げ等、関⻄圏を中⼼としたボランティア・コミュニティ活動等にも多数参画。

上越教育大学 准教授
大森 康正

【略歴】
専門領域は知識⼯学、情報⼯学、教育情報システム⼯学。これまでに、中学校技術・家庭科技術分野情報領域における教材開発に関する研究などを⾏ってきた。現在、実践に基づく初等・中等教育におけるプログラミング教育のカリキュラム開発及び指導者育成プログラムとその環境の開発について研究を⾏っている。⽇本産業技術教育学会評議員ほか、委員歴多数。

メンター研修カリキュラム

メンター研修は、集合研修4回と、LMSサービス「Goocus(グーカス)」を活用したオンライン学習を組み合わせて知識・技能の定着を図った。実施スケジュールとカリキュラム概要を表2-2 に示す。また、メンター研修の様子を図2-3 に、使用したオンライン教材イメージを図2-4 に示す。

日程 カリキュラム概要
第1回集合研修 9/22(木・祝) プログラミング教育概論(大森)
Ozobot講習(吉田)
第2回集合研修 10/11(火) メンターの心得と子どもへの対応方法(上越教育大学 清水)
プログラミング講座のロールプレイング(吉田)
第3回集合研修 10/16(日) 模擬授業:NTT⻄⽇本社員の⼦ども向けに実施
第4回集合研修 10/17(月) 模擬授業:実証校である石津小学校の先生方、寝屋川市教育委員会の指導主事の先生方向けに実施
オンライン学習 9/23(⾦)
〜10/24(月)
LMS サービス「Goocus」に集合研修各回の復習コンテンツと録画映像を配信し、メンター⾃⾝が⾃律学習を実施

図2-3 メンター研修の様子


図2-4 使用したオンライン教材(Goocus活用)のイメージ

2.1.8 メンター研修に関する工夫
  • プログラミング教育のメンターは、⼯学系の領域となる「プログラミングの技能」と教育学系の領域となる「教育⽅法の
    技能」の両方をバランスよく習得する必要がある。そのため、アンプラグドプログラミングでの「プログラミング教育概論」
    やOzobot を活用したロボットプログラミング講習と併せて、プログラミング教育への心構えや子どもへの対応方法に
    ついての講義とケーススタディを⾏うことで両⽅の技能の習得を図った。
  • 工学系・情報系専攻の学生と、教育学系・教職専攻の学生との相乗効果を狙えるよう、メンター研修や講座での
    班分けや役割分担を⾏った。
  • 講座実施前の模擬授業にて実践経験を積み、さらに講座実施後には必ずメンター主体の振り返り会を⾏うことで
    様々な気づきを促し、指導⼒向上を図った。
  • メンター同士のコミュニティ形成を目的として、SNS のグループを有効活用した。
  • メンター同⼠の結束⼒を⾼めるために、共通のT シャツを作り、模擬授業の段階から全員で着用した。
2.1.9 他地域にも再現可能なノウハウ
  • 「プログラミングの技能」と「教育方法の技能」の両方を習得させるためのメンター研修カリキュラム・教材のノウハウ
  • 集合研修とオンライン学習を組み合わせたメンター研修の運営ノウハウ
  • SNS グループの活用ノウハウ

2.2 児童生徒の募集・学習について

2.2.1 児童生徒の募集期間

2016 年6 月(本実証事業への応募前に、実証校と受講対象学年の選定を⾏ったため)

2.2.2 児童生徒の募集方法
  • 本実証事業への応募に際しNTT ⻄⽇本の顧客である寝屋川市に協⼒依頼を実施した。
  • 寝屋川市教育委員会内での検討により、寝屋川市⽴⽯津⼩学校を実証校とすることで決定した。
2.2.3 児童生徒の対象学年

小学校5 年⽣

2.2.4 対象学年の選択理由

本プロジェクト用に作成した全5回のカリキュラムの到達目標は、推奨学年を小学5〜6年⽣以上としており、実証
校との相談の結果、小学校5 年⽣を対象とすることとした。

2.2.5 児童生徒募集に関する工夫

実証校の意向と配慮により、小学校5 年⽣2 クラス62 名全員に「放課後学習(教育課程外)」として受講機
会を提供することとした。

2.2.6 児童生徒の学習期間

2016 年10 月25 ⽇〜12 月9 日の期間に全5 回(講座45 分+アンケート記入5 分/回)

2.2.7 児童生徒の学習内容

概要
キャスタリアと上越教育大学による共同実証研究成果(2015 年10 ⽉〜3 ⽉の半年間、⻑野県でプログラミング未経験の小学生向けに実施)に基づき、寝屋川市向けにカスタマイズしたカリキュラムにて、大阪の「ものづくりDNA」を継承する人材育成のきっかけとするための、小型ロボット「Ozobot」を活用した小学生向けプログラミング教育を実施。

本プロジェクトにおけるプログラミング講座の目標

  • 本プロジェクトにおけるプログラミング講座の最終目標は、以下のように設定した。
    <最終目標>
    ⾃分で組み⽴てたプログラムに応じて物理的な“もの”が動くという楽しさを体験しながら「ものづくり」に対する興味の増進を促すことができるロボットプログラミングを通じ、“プログラミング的思考”の基礎を学ぶことで、子どもたちの普遍的かつ主体的な「⽣きる⼒」を育むとともに、⼤阪の「ものづくりDNA」を継承する人材育成のきっかけとする。
  • 本プロジェクトのプログラミング講座でめざす知識・技能目標を表2-3 に示す。
表2-3 本プロジェクトのプログラミング講座で習得させたい知識・技能目標
区分 知識・技能目標
プログラミング的思考の基礎 プログラミングの
基本3 構造
「逐次処理」について理解し活⽤できる
「繰り返し」について理解し活⽤できる
「条件分岐」について理解し活⽤できる
問題解決を⾏う際の⼿法 「複数解を容認する」ことの重要性を理解できる(多様性の理解)
「試⾏錯誤(トライ&エラー)」の重要性を理解できる
プログラミングの意義や役割 ⾝近な⽣活におけるコンピュータの働きを理解できる

本プログラミング教材

  • 本プロジェクトのプログラミング講座は、プログラミングに関する前提知識のない⼩学校5 年⽣の児童を対象とするため、プログラミングに慣れ親しむ取組として、⼩型ロボットの制御を取り⼊れたプログラミング教育を⾏い、社会におけるプログラミングの役割を理解させる講座を実施することとした。
  • 上記の知識・技能目標を「学びやすく、教えやすい」教材として、OzobotとOzoBlocklyを採用した(表2-4)。
表2-4 使用したプログラミング教材
Ozobot
※通称:たこ焼き型ロボット
アメリカのEvollve 社が開発し、キャスタリアが日本国内の正規代理店として販売する約3cm 四方の小型ロボット(正式名称:Ozobot bit)。ロボットの底面に付いたカラーセンサーで線の色や「命令シール(OzoCode)」を読み取りながら動くほか、OzoBlocklyでプログラミングして意図した通りに動きを制御することも可能(図2-5)。
OzoBlockly Google が提供するビジュアルプログラミング環境「Blockly」をベースに作られた、Ozobotの動きを制御するためのブロックプログラミングツール。ブラウザからアクセスするWeb サービスとして無償で提供されているため、OS や端末に依存せず利⽤可能(図2-6)。


図2-5 Ozobot の外観と機能イメージ


図2-6 OzoBlockly の画⾯イメージと命令ブロックの意味の⼀例(実際に児童に配布した表)

プログラミング講座のスケジュールとカリキュラム

今回のプロジェクトで実施したプログラミング講座のスケジュールとカリキュラム概要を表2-5 に示す。

日程 カリキュラム概要 使用ツール
第1回 10/25(火) ・プログラミングの意義や役割について考える
・プログラミングとアルゴリズムの違いを知る
・Ozobot
・命令シール
第2回 11/08(火) ・OzoBlockly の使い⽅を理解する
・プログラミングの基本3構造「逐次」「繰り返し」「条件分岐」を理解する
・Ozobot
・OzoBlockly
(タブレット)
第3回 11/29(火) ・OzoBlockly を用いて簡単なプログラムを作ることができるようになる
第4回 12/07(水) ・様々なコースとプログラムとを構想し、班ごとに作品を作る
・ここまでに学んだ知識・技能を定着させる
第5回 12/09(⾦) ・班ごとに作った作品をみんなに紹介して、多様な考え方や方法があることを知る
・これからのプログラミング技術と「ものづくり」の将来を学ぶ
  

図2-7 プログラミング講座の様子


図2-8 児童達が取り組んだ課題(ワーク)の⼀例

2.2.8 児童生徒への講座に関する工夫

プログラミング教材について

  • 寝屋川市が既に整備済のタブレット端末を1 人1 台配布したことに加え、Ozobot も1 人1 台配布することで、子ども達のトライ&エラーの回数を最大化し、自ら学ぶ時間を多く提供した。
  • Ozobot 配布時に「形がたこ焼きに似ているので“たこ焼き型ロボット”と呼んであげてください」と伝えることで、子ども達がロボットに愛着を持ってくれるようになった。
  • OzoBlocklyはブラウザからアクセスするWeb サービスであるためOSや端末に依存しないという特徴があるが、「動きや命令が書かれたブロックを指でドラッグ&ドロップすることで組み⽴てることができる点」、「Ozobot を所定の箇所に置くだけで安定してプログラムを転送できる点」において、ノートPC よりタブレット端末のほうが小学生向け教育に親和性が高いと考え、本プロジェクトではタブレットを採用することとした(図2-9)。

図2-9 タブレットからOzobot へのプログラム転送手順

カリキュラム・指導内容について

  • プログラミングの意義や役割を理解してもらうだけではなく、プログラミング技能の基礎(今回はプログラミングの基本3構造)を習得してもらえるようなカリキュラム設計を⾏った。
  • 将来的な教育課程内での展開も⾒据え、実際の⼩学校の授業時間(講座45分+アンケート記入5分/回)内でのカリキュラム設計・講座実施を⾏った。
  • OzoBlockly は実証時点では英語表記のみだが(日本語対応は平成29 年4 月以降を予定)、教室に対訳表を事前掲示して単語の意味の定着を図る等、外国語活動への取り組みにもつなげた。
  • メンターの⾃主性を尊重しつつ、⼦ども達の進捗や実証校の想いを随時反映してワークシート等の改善を⾏った。

運営体制について

  • 今回の班活動では、他の学級活動の中で班活動をする際と同様の3〜4 人のメンバー構成をそのまま適用することで、子ども同士の関係構築に時間を掛けず、限られた講座時間内での学びの最大化に寄与した。
  • 児童の主体的な学びの観点から、全体活動・個人活動・班活動の時間配分に考慮した。
  • 全体活動を進⾏するメンター(メインメンター)、班に付いて個⼈活動・班活動の進⾏サポートをするメンター(班メンター)、クラス全体バランスを⾒て進⾏サポートをするメンター(サブメンター)で役割分担することで、⼦ども達の学びのサポートを⾏う体制を整えた(図2-10)。


図2-10 メンターの役割分担と講座運営体制イメージ

2.2.9 他地域にも再現可能なノウハウ
  • Ozobot とOzoBlockly を活用したカリキュラム・教材・ワークシート・指導案等のノウハウ
  • 1クラス30 人前後の児童に対して講座を実施運営するためのノウハウ

3. モデルの訴求ポイント

3.1 モデルのねらい・意義

  • 今年度はメンター育成及びプログラミング講座の両⾯で「地域完結型プログラミング教育モデル」となる“寝屋川モデ
    ル”の効果・効率を検証し、課題抽出を⾏う。
  • 来年度以降、NTT ⻄⽇本として“寝屋川モデル”を他地域に普及展開していく中期的目標を掲げている。図3-1
    に本プロジェクトの目標とゴールを示す。


図3-1 本プロジェクトの目標とゴール

3.2 モデル実施により得られた成果

3.2.1 受講した児童生徒の変化

児童の変化・変容の考察の観点

  • 各回の講習終了後に実施した児童向けアンケートを通して、受講した児童の変化・変容について考察を⾏う。考
    察のポイントとして、⼤きく3つの観点と各下位概念を表3-1 のように設定する。これらの下位概念を調査すること
    で、3つの考察の観点を検討する。
表3-1 考察の観点と各下位概念考察の観点
考察の観点 下位概念
(1)モチベーションの維持 1-1 プログラミングについて楽しく学習できているか
1-2 自分から進んで活動できているか
1-3 次回のプログラミング講座を楽しみにしているか
(2)プログラミング的思考に関する
基礎知識と技能の習得
2-1 プログラミングの基本構造(3 要素)についての理解の程度
(3)社会におけるプログラムの役割を理解 2-2 作成したプログラムの多様性の理解
2-3 プログラミングにおける試⾏錯誤(トライ&エラー)の重要性
3-1 社会においてプログラムが使われていることを知る

アンケート調査方法について

  • 本調査の対象は、受講した小学5 年⽣全62 名である。
  • 62 名の内訳は、1組31 名、2組31 名である。全5回の講座への出席状況は表3-2 の通りである。

  • 調査は、1回目講座の開始前に事前アンケートを⾏い、児童のプログラミング経験および講座への関心を調べた。
    また、各回の終わりに、児童の学習への取組姿勢、各回のめあての習熟度、メンターの対応について調査を⾏った。
    ※各回の質問内容等の詳細は参考資料7.4 を参照のこと。

受講前における児童の状態

  • 受講前にプログラミングの経験があったのは、60 名中4 名であった。その内容は、Scratch やLEGO などのロボット
    プログラミングなどである。大半の児童は、今回初めてプログラミングを経験する。なお、経験がある児童の経験時間
    は、全員5 時間未満であった。
  • プログラムの社会的な役割について児童の知識がどの程度あるかを確認するために、普段の⽣活の中にある、色々
    な製品などがプログラムによって動いていることを知っているかどうかを聞いた。その結果、48%の児童が「知っている」
    と答え、52%が「知らない」と答えている。
  • 受講前に、児童のプログラミングの学習に対する興味関心について聞いた結果、図3-2 に示すように、84%の児
    童が、プログラミングに興味関心を持っていると答えている。

  • アンケート結果から、今回受講する児童の多数は、プログラミングの経験がなく、どのような物か分からないことから不安もあるが、⾼い率で期待をしていることがうかがえる。

アンケート調査結果

(1)モチベーションの維持

  • 本実証では、児童のモチベーションについては『意欲・関⼼・態度』として捉え、“児童が、毎回の講習に積極的に参加し、プログラミングが楽しいという体験を通して次回も参加する希望を持っている状態”と定義した。この児童のモチベーションの変化を確認するために、次の下位概念を設定し、各講習終了後に関連の設問を児童に答えてもらった。
    • 下位概念1-1 「プログラミングについて楽しく学習できているか」
    • 下位概念1-2 「自分から進んで活動できているか」
    • 下位概念1-3 「次回のプログラミング講座を楽しみにしているか」

下位概念1-1 「プログラミングについて楽しく学習できているか」 についての検討

  • 下位概念1-1 に関しては、各回の設問の「プログラミングについて楽しく学習できましたか?」によって検討を⾏う。
    本設問の基本統計量を表3-3 に示す。また、この基本統計量を箱ひげ図によって可視化したものを図3-3 に示す。

  • 各回共に平均値が4.7以上であることから、児童は、全体を通してプログラミングについて楽しく学んでいることがうかがえる。
  • なお、2回目と4回目に標準偏差が大きくなり、最小値が3以下になっていることが確認できる。2回目の結果は、この回にOzoBlocklyというブロックプログラミングツールを初めて操作した事と、講座の形態が講義型に近いもので、児童が⾃由にプログラミングを⾏う時間が少なかったことが要因と考えられる。4 回目については、グループ活動においてグループ内の意⾒の相違による意欲の低下がうかがえる場⾯があったことから、⼀部の児童において低い結果が出たと推測される。このあたりについては、班メンターおよびサブメンターがフォローをしていくことが重要であると考えられる。
  • ただし、5 回目に平均値が上がり、標準偏差が小さくなったことから、5 回目に⾏った各班の発表会などで、自分たちの意⾒を述べ、みんなが認め合うことで、⾃⼰肯定感が上がった可能性が考えられる。

下位概念1-2 「自分から進んで活動できているか」 についての検討

  • 下位概念1-2 については、設問「自分から進んで活動できましたか?」についての検討を⾏う。本設問の基本統計量を表3-4 に示す。また、この基本統計量を箱ひげ図によって可視化したものを図3-4 に示す。

  • 表3-4、図3-4を⾒ると、全体としては回を重ねる毎に⾃ら進んで活動する姿が⾒受けられる。
  • しかしながら、若⼲名ではあるが、1回目、3回目、4回目において、標準偏差が大きく、評価の最小値が3未満となっている。特に4 回目については、大きく評価の最小値が1と落ち、標準偏差も若⼲⼤きくなっている。これについても下位概念1-1と同様にグループ活動が中⼼に⾏われた事と、メディアの取材があったことで普段とは違う環境となったことが要因に考えられる。しかし、全体としては他の数値を⾒る限り、児童の積極的な活動があったと言える。
  • そこで、第1回目と5回目の2群について平均値に有意な差があったかどうかをt検定によって調査した。その結果、第1回目と5 回目の間には有意な差が認められた(t=3.86,df=58,p<0.01)。よって、全体としては、回を重ねる毎に自ら進んで活動する姿が増えていったと確認することができたと考えられる。なお、検定に使用した統計解析ソフトは、RStudio Ver.1.0.136 である。

下位概念1-3「次回のプログラミング講座を楽しみにしているか」 についての検討

  • 下位概念1-3について、設問「次回のプログラミング講座が楽しみですか?」を⽤いて検討を⾏う。本設問の基本統計量を表3-5 に示す。また、この基本統計量を箱ひげ図によって可視化したものを図3-5 に示す。

  • 表3-5 および図3-5 のアンケート集計結果を⾒る限り、どの回も中央値が5、平均値が4.7以上と高い。児童がプログラミング授業を楽しみにしていることが読み取れる。
  • しかしながら、回を重ねる毎に、標準偏差および最⼩値を⾒るとデータにばらつきが⾒られる。また、平均値も少し下がっている傾向がある。そこで、第1回目と4回目の2群について平均値に有意な差があったかどうかを、t検定によって調査した。その結果、第1回目と4回目の間には有意傾向にある差があると認められた(t=1.93,df=59,p=0.059<0.1)。よって,回を重ね内容が難しくなるにつれて一部の児童において興味関⼼が落ちているが、全体としては、次を期待する高い興味関心がある傾向がみられた。なお、検定に使用した統計解析ソフトは、RStudio Ver.1.0.136 である。

<考察>

  • これらの3つの下位概念から、児童のモチベーションについて検討した結果、設定した課題が難しくなるにつれて若⼲程度モチベーションが落ちる児童が数名いるが、全体としては非常に高いモチベーションを維持できていると考えられる。

(2)プログラミング的思考に関する基礎知識と技能の習得

  • プログラミング的思考に関する基礎知識と技能の習得を確認するために、次の下位概念を設定し、各講座終了後に関連の設問を児童に答えてもらった。
  • なお、知識と技能について確認テストを⽤いない理由は、⼩学校段階におけるプログラミング的思考は、主に体験を重視することが次期学習指導要領に関する審議まとめ等によって指摘されていることから、児童の体験を通して、自らどのように感じたかをアンケートによって確認することとした。
    • 下位概念2-1 「プログラミングの基本構造(3 要素)についての理解の程度」
    • 下位概念2-2 「作成したプログラムの多様性の理解」
    • 下位概念2-3 「プログラミングにおける試⾏錯誤(トライ&エラー)の重要性」

下位概念2-1 「プログラミングの基本構造(3 要素)についての理解の程度」 についての検討

  • 下位概念2-1 に関しては、2回目から4回目の基本構造の理解に関する設問によって検討を⾏う。本設問の基本統計量を表3-6 に示す。また、この基本統計量を箱ひげ図によって可視化したものを図3-6 に示す。

  • 中央値および平均値をみると、全体として理解はされていると考えられるが、2 回目で分かったと思っていたが、3回目で実際に作成し、4 回目の課題でうまく使えずに理解が難しいと考える児童が若⼲増えたと考えられる。しかし、全体としてよく理解してプログラムを作成していると考えられる。

下位概念2-2「作成したプログラムの多様性の理解」についての検討

  • 下位概念2-2に関しては、3回目から5回目のプログラムの多様性の理解に関する設問によって検討を⾏う。本設問の基本統計量を表3-7 に示す。また、この基本統計量を箱ひげ図によって可視化したものを図3-7 に示す。

  • 中央値および平均値をみると、中央値は5、平均値は4.6 以上あり、全体として理解はされていると考えられる。
  • 特に5回目で平均値と中央値共に5となったのは、この回で作成したプログラムを班ごとに発表したことで、様々なプログラムに触れたことによると考えられる。このような成果発表はプログラムの多様性を理解するためには有効な⽅法と言える。

下位概念2-3「プログラミングにおける試⾏錯誤(トライ&エラー)の重要性」 についての検討

  • 下位概念2-3に関しては、5回目のプログラム作成の際に、失敗してもあきらめずプログラムを制作できたかを聞いた設問によって検討を⾏う。本設問の基本統計量を表3-8 に示す。また、この基本統計量を箱ひげ図によって可視化したものを図3-8 に示す。

  • 中央値および平均値をみると、中央値は5、平均値は4.77 であり、全体として理解されていると考えられる。
  • また、全回の児童の取組を観察した結果、間違えても何度も試⾏錯誤する様⼦が⾒られた。さらに、第4 回の班活動においても協⼒し合い試⾏錯誤して、より良いプログラムにするための努⼒を⾏う様⼦もあった。結果、5回の講座を通して、常にプログラミングにおいて試⾏錯誤する姿勢がみられ、児童はその重要性を理解していると考えられる。

<考察>

  • これらの3つの下位概念から、児童のプログラミング的思考に関する基礎知識と技能の習得について検討した結果、設定した課題が難しくなるにつれてプログラムの基本構造の理解度が落ちる児童が数名いるが、全体としてはよく理解出来ていると考えられる。

(3)社会におけるプログラムの役割を理解

  • 社会におけるプログラムの役割を理解できたかどうかを確認するために、次の下位概念を設定し、講座開始前と5回目の講座終了後のアンケートで関連の設問を児童に答えてもらった。
    • 下位概念3-1 「社会においてプログラムが使われていることを知る」

下位概念3-1「社会においてプログラムが使われていることを知る」 についての検討

  • 下位概念3-1に関して、講座開始前の事前アンケートと5 回目の講座終了後のアンケートにおける関連設問を⽤いて検討を⾏う。図3-9 に事前アンケートの結果、図3-10 に5 回目のアンケート結果を示す。

<考察>

  • 講座前の事前アンケートにおいては、48%の児童が知っていたが、5回目のアンケートでは児童の100%が「みなさんの身近な生活の中にある色々な製品が「プログラム」によって動いていることがわかった」と答えている。したがって、児童全員が、「社会におけるプログラムの役割を理解」できたと考えられる。

児童の声(アンケートの自由記述欄に記載のあった内容)

<第1回講座終了後>

  • シールをはるだけでロボットが動くからびっくりしました。
  • 思い通りにうごいてくれて、すごいと思った。あと4回もあるから、楽しみ。
  • たこ焼きロボットは小さいのにとってもかしこいと思いました。もっといっぱい動かしてみたいです。

<第2回講座終了後>

  • タブレットの操作が、少しややこしかった。
  • 今回、英語が出てきたので、英語が少し分かって良かった。前の授業より難しかったので、ちゃんと覚えておきたい。
  • 自分の思った方向にロボットが動いて、すごかった。

<第3回講座終了後>

  • 班で協⼒してするのは意⾒が合わなくて難しかったけど、意⾒がまとまって、成功した時、嬉しかったです。
  • 班で協⼒したけど、⾃分1人で出来るように頑張りたいと思います。
  • プログラムしすぎて重かった。

<第4回講座終了後>

  • 今回は班⾏動だったので協⼒できたけど、先⽣に⾔われながらやったから、次はできるだけがんばる。
  • 他の班はどんなプログラムを作ったのか知りたい。
  • 今までやってきた事で、こんなにむずかしそうなコースを作ったけど、最後はゴールできてうれしかった。

<第5回講座終了後、全体を通じて>

  • 前で説明していた先生(メインメンター)が、聞こえやすい声でいってくれたのでよかったし、班の先生(班メンター)がアドバイスしてくれたので、分かりやすかった。
  • 自分たちの班で1 つの地図に意⾒をまとめるのと、⽅向を指⽰するところは「ロボットから⾒て」というところが難しかった。
  • できるだけプログラムを短くすることが難しかった。
  • 他の班のルートも、すごく⻑かったけど、ブロックはすっきりしていて、すごかったです。
  • 身の回りには、たくさんのプログラムがあるのに、プログラミングということを知らなかったけど、今回で気づくことができた。
  • 最初は「わけの分からないもの」と思っていたけど、今は「自分の身近にあるもの」と思えるようになりました。
  • ゲームとかいつも深く考えず楽しいなって思いながらやってたけど、プログラミングをしてから、このゲームはどうやって作られたのかなとか思うようになった。
  • ゲームでバグするのは、プログラムに入ってないのが出てくるからかなと思いました。
  • 機械やロボット、ゲームなどは、プログラムで動いていて、プログラムがなければ、動かないのもある。
  • 前は、ゲームとか作るのが複雑で難しそうというイメージが強かったけど、今は、前よりもそれが身近に感じれた。
  • まだまだやりたくて、さびしいです。しょう来の夢は、プログラムを作る人になりたいです。
  • これで終わりはさみしいです。来年、6年でもやりたいです。
  • 社会に出て、プログラムを使う仕事に活かしたいと思った。
  • 自分でプログラムを組んで、将来ロボットを作ってみたいと思った。

児童が作った最終課題のコースとプログラム

  • 講座の最終回となる第5 回では、班ごとに1 つのコースとプログラムを作る最終課題を実施した。
  • 最終課題は、「たこ焼き型ロボット」がたこ焼き屋さんを出発して、材料を⼊⼿しながら目的地(お腹を空かせた⼦どものところ)に到着するストーリーとなっている。⿊⾊の格⼦状のコースはすべての班が同じものを⽤いるが、コース上で進⾏⽅向を変えるための交差点の⾊や、途中で集めるアイテム(たこ焼きの材料)は、何度も貼ってはがせるシールを活用し、児童達の創意工夫が可能なものとした。
  • その結果、2 クラス×8 班=16 班それぞれに、工夫がこらされたコース、プログラムが作られ、多様性の理解(複数解の容認)の向上に繋げることができたと考える(図3-11、図3-12)。


図3-11 班ごとに作ったコースの比較(一部)


図3-12 班ごとに作ったプログラムの比較(一部)

児童からの意⾒

  • 第5回の講座の後半で、図3-13 のような振り返りワークシートを班に1枚配布し、4 つの設問に対する意⾒を班ごとにまとめ、発表してもらった。その際に出た意⾒(メンターによる板書)を図3-14、図3-15 に示す。


図3-13 第5回講座の後半に配布し、班ごとの意⾒をまとめてもらった振り返りワークシート(一部)


図3-14 第5回講座にて児童から出た意⾒(1 クラス目)


図3-15 第5回講座にて児童から出た意⾒(2 クラス目)

児童の変化・変容に関するまとめ

  • アンケート結果及び実際の講座における児童を観察した結果から、児童のほぼ全員が本講座を最初から最後まで高いモチベーションを維持することで、講座の目標である「プログラミング的思考の基礎知識及び技能」を理解するとともに、「社会におけるプログラムの意義や役割」を理解することができたと考えられる。
  • 全5回の講座でこのような変化・変容が⾒られた要因は、(1)スモールステップでの演習、(2)児童4 名程度に1名の班メンターの配置、(3)班活動による総合的な演習、(4)総合演習の結果報告会(発表会)の実施、などが有効に働いた結果であると推察できる。
3.2.2 担当したメンターの変化

今回育成したメンターの特徴

  • 今回メンターとなった学生たちは、理系・⽂系含めて多様な得意分野を持つ15 名のメンバーが集まっており、全員が初めてOzobot を触り、なおかつ初めてOzoBlockly でプログラミングを⾏った。
  • 多様なバックボーンを持つ学⽣同⼠だからこそ、メンター同⼠の強固なコミュニティ形成を早期に⾏うことが成功の鍵となる。メンターは最初は互いにぎこちない様子だったが、NTT ⻄⽇本の事務局からプロジェクトの目的・目標を何度も伝え続けたこと、SNS グループ等のコミュニケーションツールを整備したこと、メンター同士のコミュニケーションの中心的存在を担う「コミュニケーター人材」にうまく活躍してもらったことにより、徐々に15 人の結束が強まっていった。
  • プログラミング講座全5回の教材・カリキュラム及び指導案はメンター研修実施前に準備しメンターに提供していたが、メンター自身が児童たちの理解度を踏まえながら自主的にワークシートや指導案を随時改善していくようになったのが今回のメンター達の大きな変化及び特徴である(図3-16)。


図3-16 メンターによる自主的なワークシート・指導案等の改善活動の様子

具体的なプロセスと教材改善

  • 講座開始前のメンター集合研修の中で⾏った2 回の模擬授業にて実践を⾏い、直後に振り返りおよび改善を⾏った。その後もプログラミング講座が⾏われる度に実践・振り返り・改善を⾏い、指導案と教材を改良しつつ講座を⾏った。
  • 第5回講座における最終課題は当初、図3-17のような鉄道の自動運転を模したものであったが、メンターが児童たちに接しながら、習得させたい目標等を押さえつつ教材を作成していくと、図3-18 のような格子型のコースの上をOzobot が目的の位置まで到達する課題が出来上がることとなった。
  • 図 3-17 研修開始時の指導案に基づいた最終課題
  • 図 3-18 講座開始後メンターたちが考案した最終課題
  • 図3-17の最終課題は、2台のOzobot が同時に走るため、「並⾏動作」と「動作待ち時間」の概念が必要となる⾼度なものである。
  • それに対して、図3-18の最終課題は、1台のOzobotだけを走らせるものとし、「たこ焼き型ロボット」がたこ焼き屋さんを出発して、材料を⼊⼿しながら目的地(お腹を空かせた⼦どものところ)に到着するストーリーとなっている。
    ⿊⾊の格⼦状のコースはすべての班が同じものを⽤いるが、コース上で進⾏⽅向を変えるための交差点の⾊や、途中で集めるアイテム(たこ焼きの材料)は、何度も貼ってはがせるシールを活⽤し、児童達の創意⼯夫が可能なものとなった。
  • メンターは、児童たちが考えたコースを、逐次・繰り返し・条件分岐の構造化プログラミングの3要素をうまく組み合わせて効率的にプログラミングができるようアドバイスを⾏うというスタイルをとった。

アンケート調査結果

  • メンター研修実施前とプログラミング講座実施前後にアンケートを取り、メンターが指導者として考えがどう変化したかを分析する。まず、今回集まったメンター15名の、メンター研修実施前におけるプログラミングスキル(図3-19)及び小・中学生への教育経験(図3-20)を示す。
  • 図 3-19 メンターのプログラミングスキル(回答数=15)
  • 図 3-20 メンターの小・中学生への教育経験(回答数=15)
  • 今回集まったメンターは、15 名全員が20 代で大学生が中心となっており、プログラミング経験者からまったく経験のない者まで幅広く存在している。
  • 小・中学生への教育経験は、半数以上の者に経験があるが、3割ほどは小・中学生とまったく関わりがなく、今回初めて小学生と接する者もいる。そのため「プログラミングの技能」と「教育方法の技能」を研修時にバランスよく提供することができたのは意味があったと言える。
  • 「研修にて印象に残った点や役に⽴つ点」をメンター向けに実施したアンケートにて質問したところ、以下のような意⾒があった(一部抜粋)。
    • プログラミング教育の目的や、手段を学ぶことができた。
    • プログラミングとアルゴリズムの違いについて深く考えられた。
    • 授業中に子ども同⼠のトラブルが起こった時、指導する側はトラブルの解決と授業の進⾏を⾏わなければならない。このような場合にどういった対応をすれば良いのかということを学ぶことができた。
    • 支援を必要とする子どもたちへの接し方の講習があったのがよかった。
  • 次に、プログラミング講座前後におけるメンターの意識の変化について、メンター向けに実施したアンケートの設問「実際に⼦どもに指導することに対して不安はありますか?」によって検討を⾏う。講座前後のアンケート結果を図3-21に示す。  


    図3-21 講座実施前後における「⼦どもに指導することに対しての不安」の変化(回答数=15)

     
  • 図 3-21 の結果を⾒ると、プログラミング講座の前後で「①ほとんど不安はない」及び「②少し不安はあるがサポートがあれば問題ない」と回答したメンターは増加し(46%→67%)、「③不安はある」及び「④不安が非常に⼤きい」と回答したメンターは減少している(54%→27%)ことが分かる。

メンターの声(アンケートの自由記述欄にあった内容から一部抜粋)

<指導上の工夫点について>

  • なるべく、児童⾃⾝が考えるようにトライ&エラーを意識しました。とりあえず間違っているのがわかっていてもそこは⾔わず、動かなかったときに「なぜ動かなかったのか」「どうすれば動くようになるのか」ということを児童自身で解決できるように指導していきました。
  • 工夫した点は、児童がどのような解答をしても決して否定せず肯定的なコメントをすること、小学5 年⽣が理解しやすい⾔葉で説明すること、私たちメンターも楽しみながら講座に参加することです。

<プロジェクト全体を通じての感想>

  • 教師をめざしている自分にとって、小学生と一緒にプログラミングを学ぶことで、自分にとっても子ども達にとっても、良い影響を与えているプロジェクトだった思う。
  • 今回用いたロボットとビジュアルプログラミングでの教育は、子どもたちに評判がいいように感じていたので、今後も同様な方法でプログラミング教育を普及させていただきたいです。
  • まだ始まったばかりのプログラミング教育の最初のプロジェクトにかかわることが出来て非常に光栄なことで感謝しかありません。意⾒というほどのことでもありませんが、私が思ったのが様々な年齢、職業の⼈たちで授業を考えていければ良くなると思うと共に、これからも児童のことを第一に考えプログラミングは楽しいと思ってもらえるような授業にすれば、必ず児童達にとって良い刺激になると信じています。

メンターの変化に関するまとめ

  • アンケート結果及び実際のメンターとのコミュニケーションを通じてヒアリングした結果、本プロジェクトにおけるメンター育成内容は充実した内容であり、全期間を通じて高いモチベーションを維持しつつ、メンター⾃⾝の知識・技能、将来のキャリアにとっての経験値として、良い影響を与えたと考えられる。
  • 今回育成したメンターが他の児童に対し引き続き指導していく、もしくは他地域で新たにメンターを育成していくためには、(1)メンター同士の強固なコミュニティの早期形成、(2)知識・技能の習得に加え実際の子どもを相手とした模擬授業(実践)機会の提供、(3)サブの指導者(例えば他のメンターや教員等)のサポート、が成功の鍵となると考える。
3.2.3 保護者の反応(実施アンケートより)
  • 皆と協⼒し合う⼒や、考えてプログラムし、どの様に動くのか。また、⼯夫によって、⾃分だけで動かせた喜びや(皆で考えても)色々な意味で身になると思う。学校でも授業に取り込んで欲しいとも思うが、なかなか今の勉強以上に増えて、やっていけるのか?と思うところもある。出来ればどんどんやっていってほしい。
  • 毎回プログラミング講座を楽しみにしていた。父親がシステムエンジニアなので、同分野に関われて嬉しかった様子。
    将来の可能性が広がった気がする。
  • 子どもの頃からプログラミングに触れさせられるのはコンピュータ社会においてとても良いと思う。⼦どもは意外に理解が早いので、大人より身に付くのが早そうだなと感じた。これからもこういう取り組みが続いてほしい。
3.2.4 教員の反応(祝町小学校ロボットクラブ顧問)

実証校 校⻑

  • メンターさん達の熱意ある取り組みに感動し、こちらも負けずに頑張らねばという気持ちになった。
  • トライ&エラーを繰り返しながら最善解を求めていくプログラミング教育は、非常に可能性のあるものだと感じた。
  • こういった取り組みは学校教育の中だけでできる訳ではないので、地域のメンターさん達と一緒にやっていくことに意味はあると感じた。

実証校 教諭

  • 「プログラミング教育」と聞いて最初は何をしたら良いのか分からず抵抗があったが、Ozobot(たこ焼き型ロボット)を実際に触ってみて考え方が変わった。
  • 講座内容の工夫次第で、子どもたちが興味を持って取り組めると思うし、コンピュータやプログラミングの存在を身近に感じることができると思う。

教育委員会 指導主事

  • 次期学習指導要領を⾒据えた上でも、また、本市が進めている学園ICT 化構想事業についての取組みの中でも、非常に参考になり意義のある取組であった。
  • 児童は臆することなくプログラミングに取組み、私たちの想像以上に自分たちで考え、協働する場⾯を⾒ることが出来た。プログラミングとはどのようなものかというきっかけとしての体験が出来たと思う。
  • 今回は育成していただいたメンターを活用することが出来たが、今後プログラミング教育を進める上で、市として、どのような形でメンターや支援者を確保し、担任等との連携をどう進めていくかなどの課題についての検証にもつながった。
3.2.5 協力大学、団体等の反応

メンター育成講師:吉田研一氏(ECC コンピュータ専門学校/キャスタリア株式会社)

  • 児童達は、講座の序盤ではプログラムの3構造(逐次・繰り返し・条件分岐)の理解とそれをうまく使ったプログラムの作成がうまくいかずつまずいていた。中盤にシンプルな問題を中心に提供し、メンターが適宜フォローする形でクリアさせていったことにより、プログラミングおよびその使い⽅や考え⽅が解ってきたようで、児童全体としての理解度を底上げできたと思われる。
  • 本プロジェクトで育成したメンターは、使用した教材の使い方をマスターし、この教材によるプログラミングの教え方・進め方を把握できているため、今後もメインの指導者として他の児童達への講座を実施できる可能性は高いと思われる。ただし、児童の特性や集団での振る舞い、子どものプログラミング習得の際の反応についてはまだ経験が浅い部分もあり、引き続き模擬授業や研修などで経験を積む必要はある。

カリキュラム・教材監修:大森康正氏(上越教育大学 准教授)

  • 児童達は、⾃らのペースで試⾏錯誤(トライ&エラー)しながら⾃ら課題に取り組むことができていた。つまずいた場面は児童ごとによって違うが、その際には、答えをすぐに教えるのではなく考え方のポイントを教えるようにメンター達に伝えていた。これらのメンターによる児童に対するアドバイスの効果は、児童のモチベーション変化を⾒る限り適切に⾏われたと考えられる。
  • Ozobot を活用したプログラミング教育は、⼯場内での巡回ロボットや郵便配送ロボット等にも繋がり、「ものづくり産業」を意識した題材への発展可能性があるため、子ども達の「ものづくりDNA」を醸成するきっかけづくりとしては良い取り組みだと感じた。
  • 本プロジェクトで育成したメンターは、準備の⼤切さ、児童に合わせた指導⽅法等について実践を通じて多くのことを学んできている。今回は全体活動を進⾏する「メインメンター」、班の学びをサポートする「班メンター」に役割分担をする形式を取ったが、全員が両者の実践を積むことで、他の児童に対して⼀⼈称で講座を⾏うことは可能であると思われる。

4.モデルの改善点

4.1 実施にあたって直面した困難

  • 参加動機の異なるメンター同⼠の強固なコミュニティ形成
  • 授業構想⼒、実践⼒の異なるメンターへの指導案の落とし込みや指導内容の均⼀化
  • 1 コマ45 分という限られた時間内での講座実施
  • 児童の理解度・習熟度に応じた指導内容等の随時改善

4.2 実施を通して把握した反省点

  • 本プロジェクトは、メンター⾃⾝が児童たちの理解度を踏まえながら⾃主的にワークシートや指導案を随時改善していくようになったのが⼤きな特徴であるが、普及展開性を考えるとメンターの⻑期的なモチベーション維持や指導内容の標準化が課題となる。
  • 今回の講座の運営は、学校側との相談の結果、1 クラス約30 名の児童に対し8〜15 名(班に1 名以上)のメンターが稼働する形で⾏ったが、普及展開性を考えると、メンター募集・育成の観点やコスト面が課題となる。

4.3 モデル普及に向けた改善案

  1. メンターに対するインセンティブ設計
    メンターの参加動機や、⻑期的なモチベーション維持に繋がるようなインセンティブ設計を⾏う必要がある。
    例:インターン制度の活⽤、大学の単位認定設計、公的機関によるメンター認定制度の検討等
  2. カリキュラム・教材・指導案の標準化とノウハウの共有化
    • メンターによる教材準備時間を削減するためにも、カリキュラム・教材・指導案については、今回の実践を踏まえて標準化し、教育クラウド・プラットフォームを通じて他地域に展開していく。
    • 今回は小学校の標準的な授業時間である「1 コマ45分」という時間内でのカリキュラム設計及び講座実施を⾏ったが、児童たちのより深い学びのために「2コマ90 分」で展開可能な汎用性も持たせていく。
    • また、特定のメンターが持つ指導方法の成功事例等のノウハウをメンター同士で互いに共有していく仕組みの構築も⾏っていきたい。
  3. 講座運営体制の効率化
    • 児童の主体的な学びを促す指導方法を実践していくことにより、1 回の講座で稼働するメンターの数を減らしていく。
    • また、今回実施したメンター研修を学校の教員向けにも実施していくことで、教員がメインで教え、少数のメンターが進⾏サポートをするという体制も取れると考える。
  4. 地域のプログラミング教育の「ハブ機能」の構築
    • 本プロジェクトでNTT⻄⽇本及びキャスタリアが担った、地域の大学・高専等の教育機関、教育委員会、小・中学校などをとりまとめる「ハブ機能」を他地域でも構築していくことで、モデルの普及展開に寄与する。
    • NTT ⻄日本の支店等の拠点・人材を活用するとともに、メンター同士の強固なコミュニティを形成することができる資質を持つ「コミュニケーター」や「コミュニティマネージャ」を複数地域で育成していくことが重要だと考える。

5.モデルの将来計画

実施地域(寝屋川市内)における活動の継続(平成29 年度〜)

  • 子どもたちの普遍的かつ主体的な「⽣きる⼒」を育むことを目的として、平成29 年度以降の寝屋川市内の他の小中学校でのプログラミング教育実施を⾒据え、活動を継続していくことを想定している。
  • 寝屋川市教育委員会がめざす子ども像の1 つである「コミュニケーション⼒と情報活⽤⼒を⾝につけた⼦どもの育成」を目的として平成25 年度から推進する「学園ICT 化構想事業」にてこれまでに整備してきたICT 環境と、本実証事業の成果である教育クラウド・プラットフォーム上のサービスを有効活用し、導入・運用コストを考慮する中で、寝屋川市内の全小中学校への展開が可能となる。展開するにあたっては、プログラミング教育の小学校必須化に向けた準備として、本実証事業で使⽤した教材を⼀例とし、先⾏的にプログラミング教材の作成に取組むことも可能である。
  • メンターに関しては、本プロジェクトで育成した寝屋川市内の大阪電気通信大学、摂南大学、⼤阪府⽴⼤⾼専の学生をきっかけとし、今後もメンター育成やメンター派遣に関しての連携をさらに強化・継続していく。各大学・高専の「ゼミ」「研究室」「部活」「サークル」等にメンター育成・派遣の仕組みを構築することで、継続性の担保が期待できる(図6-1)。なお、プログラミング教育の小学校必須化に向けては、寝屋川市の「ICT 研修講師」を中心として進めていくことも想定している。
  •   


図6-1 地域完結型プログラミング教育モデルの継続イメージ

NTT⻄⽇本及びキャスタリアによる他地域への活動の横展開(平成29 年度4 ⽉〜)

  • 本実証事業で得られた成果(教材・カリキュラム・指導案等)は、教育クラウド・プラットフォームに搭載するとともに、NTT⻄⽇本の強みである「学校向けICT 環境整備や教育システム等の導入業務」とセットで他地域の学校向けに低廉な価格で提供していくことを想定している。
  • カリキュラムの確⽴に関しては、次期学習指導要領の審議状況も踏まえ、公教育への導入も視野に進める。
    例:社会に開かれた教育課程の実現、外国語活動とプログラミング的思考の醸成を掛け合わせたカリキュラム等
  • NTT ⻄⽇本は、⻄⽇本エリア30 府県に支店を構え、平成29 年1 月現在で32 の自治体と「情報通信基盤整備」、「教育×ICT」等の名目で包括連携協定を締結済である(図6-2 参照)。これらのネットワークを活かし、本実証事業の成果を他地域に横展開していくことを想定している。
  • 地域内でのメンター育成モデルに関しては、対象自治体が包括連携協定を締結済の高専・大学の学生を本実証事業の成果をもとに育成するとともに、NTT ⻄⽇本が繋がりを持つ⻄⽇本エリア全域の⼤学とのネットワークを活かすことで、NTT ⻄⽇本及びキャスタリアがハブとなり、その地域内完結可能なプログラミング教育モデル構築が期待できる。いずれも、寝屋川市モデルと同様、各大学・高専の「ゼミ」「研究室」「部活」「サークル」等の巻き込みが継続性を担保する鍵であると考える。
  • 近隣にメンターを募集する教育機関(大学・高専等)が無い地域の場合は、学生以外の地域人材(教員OB、IT 企業OB等)の活用も視野に、メンター募集・育成モデルのバリエーションを広げていく想定である。
  •   


図6-2 NTT⻄⽇本が包括連携協定を締結済の⾃治体マップ(平成29年1月現在)

6.参考添付資料

メンターの募集文・メンターの感想

トップへもどる